茨城県古河市にたたずむ古河総合公園は、一本の木に紅白の花が咲く「源平」をはじめとする春の花桃、夏の大賀ハス、秋の紅葉、冬の雪景色と四季を通じて訪れる人の目を楽しませる公園だ。1975年(昭和50年)に一部開園して以降40年以上の歴史をもち、25ヘクタールに及ぶ広大な敷地には、この地に居を構えた鎌倉公方足利成氏一族の古賀公方館址の石碑をはじめ、国重要指定文化財の旧飛田家のほか、県指定文化財の旧中山家が移築されるなど、豊かな自然だけでなく地域の歴史をも学ぶことのできる貴重な場として、一年を通じて訪れる者が絶えることはない。
そんな古河総合公園のもう一つの知られざる姿、それが世界の主要な文化景観の保護と管理を目的とした顕著な活勤に対してその功績を称えることを目的として創設され、ユネスコとギリシャが主催するメリナ・メルクーリ国際賞を2003年(平成15年)に日本で初めて受賞した文化景観であるという点だ。
女優であり、またギリシャの文化大臣として、景観保護と持続的開発の分野での先駆者であるメリナ・メルクーリにちなんで設けられたこの賞は、1999年(平成11年)に第1回の受賞が行われて以降2年毎に授与されている。古河総合公園は東京近郊にあり開発圧力に耐えたこと、そしてかつてこの地にあったものの、戦後の食糧事情により埋め立てられていた御所沼を復元させ、約四半世紀を費やして自然と文化を再生させたことなどが高く評価され、受賞の栄誉に輝いた。
受賞から2年後の2005年(平成17年)3月には、受賞の栄誉と責任を将来にわたって受け継ぐため、公園の導入路にあたる道が「メリナ・メルクーリの小径」と名づけられ、これを記念する石碑が建てられた。石碑から公園の入り口を臨む小径の中ほどにはオリーブの樹が植樹され、市章とともに刻まれたギリシャ国旗がギリシャとの深い縁を静かに訪れる者に伝えている。
古河総合公園・フォトレポート
photos: Junko Nagata © GreeceJapan.com