「ミハイル ギニス アオヤマ」は、長年にわたって日本と古代ギリシャの美学を組み合わせた独自の革新的なスタイルを生み出してきた東京のファッションブランドのひとつだ。オーナー・デザイナーのギリシャ人ミハイル・ギニスと同ブランドのプロデューサーにして彼の妻ギニス・青山祐子は、この10月16日(水)から22日(火)まで東京・松屋銀座でポップアップショップを展開している。
自身のバックグラウンドから創作の根幹に至るまで、GreeceJapan.comに対しありのままを語ってくれたギニス氏に感謝したい。
Interview:Junko Nagata
松屋銀座で行われるポップアップショップでは、何を披露されるのでしょうか?
今回のポップアップショップでは、日本の精緻なクラフトマンシップを独自の視点と感覚で再解釈するという私たちのアイデアを披露したいと考えています。洋服とスカーフの中間のようなデザインの「ウェアラブル・アート・ストール」を紹介します。また今回のイベントでは、私たちの定番商品「スタンダード・コート」を洋服にも、着物にも合わせることが出来るようアレンジした新商品「キモノ・コート」を発表する予定です。また、これに加え、ゼロ・ウェイストの精神に則って、私自身が一枚一枚手を加え、その後熟練の技術で仕上げられたオリジナルの生地シリーズも合わせて発表する予定です。この他にも、世界的にその名を知られるテキスタイルデザイナー、須藤玲子氏がデザインする「NUNO」の生地を組み合わせた「ウェアラブル・アート・ストール・シリーズ」も紹介します。
ブランド「ミハイル ギニス アオヤマ」の特徴は何でしょうか?
ブランド「ミハイル ギニス アオヤマ」は、古代ギリシャと日本のスタイルをユニークに融合させ、柔軟かつ様々なアレンジが可能な‟身に着けるアート”を生み出す点で他者と一線を画しています。日本の最先端の技術が用いられた生地や皮革を使用し、伝統的な体型や性別のルールを乗り越え、自分らしさを表現することが可能となるウェアを提供しています。いずれも日本で手作りされており、中にはウールと革の組み合わせなどといった革新的な素材が多く用いられています。創造性と多様性における私たちのブランドのこうした取り組みは、古代の伝統と現代の革新性との融合を反映した、サイズに囚われないカスタマイズ可能なウェアに明確に現れていると考えています。
ギリシャと日本はあなたの作品のどこに現れているのでしょうか?
私のデザイン哲学は、古代ギリシャと日本の美学との組み合わせに影響を受けています。ギリシャで生まれ、ロンドンで学んだ私は、日本の文化、建築そして折り紙からインスピレーションを受け、これらを西洋の三次元の概念と組み合わせることにより、ユニークで身に着けられるアート・ストールを生み出しています。自分自身のギリシャ系のDNA故に、私は建築や幾何学、さまざまな形の彫刻芸術、特に日本のテキスタイルや芸術と融合した服飾技術からインスピレーションを受けています。こうした融合により、自己表現と革新への取り組みを反映した、着る人の気分や欲望に寄り添う柔軟でウェアラブルな「アート・ストール」が生まれたのです。
モード界におけるあなたの旅はどのように始まったのでしょうか?
私はギリシャ北部の大都市テサロニキで生まれ、ロンドン芸術大学のロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LCF)でファッションデザインとテクノロジーを学びました。他者とコミュニケーションを取り自己表現する方法を見出したいという私の願いとは、服を作り生地を生み出すことでした。私はミシンや生地が立てる音に囲まれて育ちました。私の母はモデリストで、姉と二人でアトリエを持っていました。このことから、幼い頃から服飾の美学という概念が私の関心の中心を占めていました。私は幼くロマンティストでしたから、こうした一連のプロセス全体を注意深く観察していたのです。私は90年代ジェネレーションX世代に属しており、音楽やアートが大好きです。こうして私は服飾デザインを学ぶためにロンドンへと導かれ、そこでこの芸術を通じて自分自身を表現し、自分のメッセージを世界に伝えることができるということに気づいたのです。
どのようにして日本へと導かれたのでしょうか?あなたは三宅一生の最初の外国人インターン生の一人だったと伺いましたが。
私の日本への愛は、黒澤明、溝口健二といった映画監督の数々の白黒映画を通じ非常に早くから始まりました。しかし、おもに大学在学中から、東京の現代美術や電子音楽の影響を受けながらも、奇妙な矛盾した性質を持つ日本の文化や伝統についての研究を始めました。これらすべての要素が私の中に力強く入り込むことにより、日本へ旅したいという願望が生まれたのです。LCFでの在学中、インターンシップ・プログラムを行う必要があり、私は東京のイッセイ・ミヤケに入社しました。そこで私は日本文化、そしてもちろん芸術やファッションについて言葉に尽くせない素晴らしい経験を得たのです。イッセイ・ミヤケの皆は私に特別な印象を与えてくれ、こうして私は日本のテキスタイルから大きなインスピレーションを受けました。
日本の生地に対する私の愛と関心が、私が初めて日本の生地を購入するきっかけとなったのです。こうしてパリで発表するコレクションを製作したあと、続く2つ目のコレクションをスーツケースに詰め込んで、探し求めているものを見つけたいという思いを胸に東京へと向かったのです…。
写真:デザイナー提供
MICHAIL GKINIS AOYAMA Homepage – instagram