ギリシャ伝統舞踊グループ「ケフィ」創設者・柏木利恵子氏 独占インタビュー

GREEK

この世界のあらゆる場所に、ギリシャ系移民らが自分たちのルーツとの繋がりを保つために創設したギリシャ伝統舞踊のダンスグループが存在している。そんな中、日本では、ギリシャ系住民でなく、ギリシャとギリシャの踊りをこよなく愛する日本人の柏木利恵子氏によって、24年前に設立された「ギリシャダンスを楽しむ会 ケフィ(Κέφι)」が存在し、その活動を通じて長年に渡り日本の人々にギリシャのあらゆる伝統舞踊を学び親しむ機会を提供し続けている。

残暑厳しいある日、月例のレッスン後のケフィの代表・柏木利恵子氏にGreeceJapan.comは独占インタビュー。ギリシャとの馴れ初めについて、またギリシャダンスに賭ける熱い想いについて語っていただいた。

インタビュー:GreeceJapan.com 永田純子(Junko Nagata)

2019年1月東京・サントリーホールで開催されたギリシャ・日本外交関係樹立120周年記念オープニングイベントで踊るケフィのメンバー ©GreeceJapan.com/Junko Nagata

ケフィはいつ頃活動を開始されたのでしょうか。

1999年です。その時から、ケフィという名前で活動を始めようと思って、東京の入間福祉センターで月1回例会をするという今のスタイルが始まりました。

でも、そのきっかけというのも、私が大学でギリシャダンスを教えていたことから始まるんですが…これも不思議なんですけれども、電車で偶然声をかけられたんですよ、さる女性から。私はその時ダンスの本を読んでいたんですが、そこで「ダンスをしている人ですか?」って声をかけられて。声をかけたその方がクラシックバレエの先生だったんです。その日、公演を新宿文化センターでなさるっていうことで「もしよかったら見に来てください」って、チラシをいただいたんです。そのタイトルが『真夏の夜の夢』だったんですね。

私はギリシャのダンスをしていますと言ったら、その先生がすごく反応を示されて。クラシックバレエの発表会をお知らせいただいたのに、むしろギリシャダンスに興味を持たれて「教えてほしい」ってことになったんです。でも、その時私は学校でしか教えていなかったんですが、その先生が是非教えてほしいと言われて…その方の強い熱意に打たれて、学校の外で教室のようなかたちで教える場を作ってみようかな、と思ったのがきっかけなんです。ですから、当時の教員仲間の先生方5〜6人と一緒に始めたという感じですね。

2023年の日本ギリシャ協会年次総会でギリシャダンスを披露したケフィの代表者・柏木利恵子氏(中央) ©GreeceJapan.com/Junko Nagata

当時その人数で始まってから、20年以上経ちましたが、今は何人の生徒さんがおられるのでしょうか。

今は、だいたい出たり入ったりもしてるんですけれども、30人くらいですね。今日も2人ほど10年振りくらいに来た人がいるんですよ。設立当初は独身の人も多かったんですけれども、結婚だ出産だ子育てだとブランクがあって、今日来られたその2人も、子育てが落ち着いたから、またやりたくなったと来たんですよ。ですからそんな感じで、長期休んでる人もいれば毎回欠かさず来る方もいて、色々ですね。ですから退会もないんです。一度ケフィで500円を収めて参加すればもう会員っていう気持ちでやっています。1回限りで来ない人もいますけれども、何回か来たならもうメンバー、っていう感じで…今回も会ったことがあるとか、見たことがあるとかいうだけで盛り上がって、そんなところ、この会のいい加減なところが特徴かなと思います。

会の名前が「ケフィ」だけに。

そう、「ケフィ」ですから。その都度、何か楽しいことにのってるかな、って感じです。

いけばなインターナショナル名誉総裁の高円宮妃久子殿下のご臨席のもと開催されたいけばなインターナショナルフェア2019でギリシャダンスを披露するケフィのメンバー ©GreeceJapan.com/Junko Nagata
いけばなインターナショナル名誉総裁の高円宮妃久子殿下のご臨席のもと開催されたいけばなインターナショナルフェア2019でギリシャダンスを披露するケフィのメンバー ©GreeceJapan.com/Junko Nagata

発表会で踊られる時には、伝統衣裳を着て踊られていますが、これはギリシャで買い付けてこられたのでしょうか。

そうです、ギリシャに行って買って来たり、一部は買って来たものをデザインして同じような生地を購入して、真似して作ったりしたものもあります、中にはね。でも大体高いものというか、しっかりした衣裳などは現地で手に入れたものですね。

先生が大学で教えられてから、その後いろいろあってケフィができたということですが、先生がそもそもギリシャのダンスに興味を持たれて教えるまでになった、その前段はいかがでしょうか。

私、もともとフォークダンスをやってたんですよ。学校でも、世界のフォークダンスみたいなレクレーションダンスとか、そういうのを勉強してたんですけれども、ある時通ってた青山学院の先生からお誘いを受けたんです、ギリシャに行かないか、って。私もその時、世界のフォークダンスっていうのではなく、ひとつの国に絞って勉強してみたいという衝動に駆られてる時だったんです。そんなタイミングでギリシャに行かない?って誘われたものですから、まずは行ってみようかなと。それで夏休みの1か月ギリシャに行くことになったんです。

当時ギリシャ舞踊の第一人者で、大学で初めてギリシャダンスを教えられた学習院の田中イチ子先生(※田中イチ子学習院名誉教授)が、ギリシャに滞在しながら1年くらい本格的に勉強されて、その後現地のセミナーに通われていたんです。そんな中、お誘いいただいた私は、田中イチ子先生と空港で「初めまして」ってお会いして…そこから都度自己紹介もしながら1か月をともに過ごしたんですけれども…その時に、何か、ハマっちゃったんですよね。ギリシャの人たちとか、風土、クレタ島のレシムノの踊りも音楽も気に入って。それで、これが求めてるものじゃないかなあと思って。縁があったんだから、もう少し続けたいと思ったんですね。

その後は「来年また行きましょうね」って言い合っていたんですが、受入先の都合でセミナーが中止されたんです。行けないなら、せっかく縁があってギリシャダンスをやったんだからと、私は学習院の田中先生の許可をいただいて、学生と一緒に1年間先生の授業を受けたんです。ギリシャではないけれども、先生の研究されたダンスを1年間受けたら…先生が仰るには、実は自分は辞めると。それで、後任を探していたけども、なかなか合わなくて決まらなかったけれども、あなたやってくれない?と言われてしまって。本当に、ただそれだけのご縁だったんですけれども、ギリシャダンスに関しては密度が濃くて…引き受けて、今日に至ってるというか、そこから大学でもギリシャダンスを専門に勉強するようになったんです。

先生は、ケフィのためやギリシャダンスのためを含めて、今までに何回ギリシャに行かれたことがおありでしょうか。

そうですね、レッスンだけでも10回は超えてますので、10数回ですかね。ケフィも、メンバーの人たちを連れて5~6回行ってますから。メンバーは絶えずその都度顔ぶれは違いますけれども。ケフィのメンバーを誘って一緒にダンスレッスンを受けたこともあれば、ただギリシャっていうものを紹介したくて、ギリシャに触れるためだけの旅行っていうか、そういう時もありましたしね。

©GreeceJapan.com/Junko Nagata

日本では、これまで数えきれないほど公演されてこられたと思いますが、ギリシャで公演をされたことはありますでしょうか。

ギリシャでのケフィの公演は1回だけです。2019年、コロナの直前ですね。ちょうど踊りもメンバーが熟知して来つつある頃のタイミングでしたし、財産というか、衣裳も揃ってきていた時だったので…アテネのメガロムシキで行われたジャパンウィークでの公演は、タイミングとしては衣裳はパーフェクトでしたし、踊りも曲も現地受けするようなものを選びましたから、すごい歓声があって、忘れられない公演になりました。

コロナ禍も過ぎ、ぜひもう一度公演を、と思われているのではと。

機会があればとは思っています。当時の経験が、メンバー自身も忘れられなく思っていますので。ですから、きっかけがあれば、またそういうものもチャレンジしていきたいですよね。

来年2024年には、日本・ギリシャ文化観光年に向けた様々な催しが計画されています。ぜひその機会に、いま言われた30年来の心残りを解消するようなケフィの参加が実現すればと思います。

そうですね、数々のイベントが行われる二つの国にとってとても重要な機会であると思います。

踊りの中でどういった曲がお好きでしょうか。

そうですね、不思議と変わらず好きなのは、クレタの音楽ですね。

クレタの音楽が好きというのには、何か理由があるのでしょうか。

クレタの…他の地域や島と違うリズム、体の中にあるリズムが、自分の体の中で現地の人たちと一緒に通った時に、なんとも言えない、それこそ古(いにしえ)っていうのか、今じゃないギリシャを感じました。そうした経験からでしょうか。それ以外でも、いちばんギリシャ人とともに手を取ってよく踊ったっていうのが、クレタの踊りだったので。クレタの夏祭りにも5~6回以上は参加して、200人くらいの村人と一緒に、その村のしきたりに沿って踊ったりした経験から、体の中に忘れられないものとして残っています。

そういうことだと、何ていいますか、「呼ばれて」いる感じがしますね。

そうですね。ですから、「好き」だから、「自分が上手」だから、「得意」だから、「これを踊るとウキウキする」から、というものともまたちょっと違うんです。何か、共感というか、違和感を感じずともに過ごしてきたみたいな。ダンスを通して、やっぱり手と手、それからリズム、体の揺れが一緒のところから、そういうものを共感するっていうのは、他では得難いものですね。

あと、現地のフォークダンスといいますか、現地にもギリシャダンスの会があるんですよ。その会とダンス公演の後に交流して、こちらもダンスを披露しましたし、向こうも今日やったような感じで一緒にレッスンを受けて、交流してきました。そういう触れ合いが、ギリシャに行くとできるから、そこが魅力ですよね。

なかなか日本だと、ギリシャのダンスというと、好きな方は来て下さるでしょうけれども。

なかなか、まだまだ認知度が低いですし、ギリシャのダンスと聞いてベリーダンスのようなものを想像しちゃう人も多いですし。もともと始めたきっかけである「こういう感じで普及できればいいかな」っていうもの、それが最初に声をかけられたクラシックバレエの先生からのきっかけだったんですけれども、少しずつ普及して、わかってもらうようにしたい、こういう方をもっと増やしたいなあとは思ったんです。

そういったことから、公演活動でも、例えば老人ホームのボランティアで、納涼祭で踊ってくれないかという依頼で、40分の公演を引き受けたりもしています。その練習を今日もやったんですけれども…衣裳をつけてね。私たちも調布市で公共施設を使わせていただいて練習していますので、そういった形で地元に恩返しといいますか、こちらからも与えられるものが何かないかなと思いましてね。ですから他の公演と同じように、衣裳もすべてフル装備で臨んでいます。まあ、この後クリーニング代がかかるんですけれども…大舞台と同等ですよ、老人ホームといっても、しっかりと。そうすることによって、ギリシャダンスがわかってもらえるかなと思いますから。ギリシャダンスって、ギリシャの方が踊る分にはいいんですけれども、日本で踊る場合は、やっぱり衣裳も説得力のひとつで…音楽と衣裳とダンスと、これは外せないなあと思うんです。

それもダンスの一部ですからね。

そうなんです。だから、それには意識して、メンバーにもその辺は浸透していますね。どんな発表でも、衣裳を丁寧に、大事に扱いながら、フルでいきましょうと。

今ケフィで毎月1回で教えておられる以外で、ギリシャダンスを教える機会はお持ちでしょうか。

ないんです。私の当初のイメージとしては、遠方から来てる人たちもいたので、その人たちがある程度できるようになったら、地域でケフィのようなグループを作っていって、それで、時々合同で交流しながらやってみたりっていう、そういう広がりができればいいなと希望していたんです。でもなかなかここから一歩出て、教えるというか、グループを作るっていう人たちが出てこないのが、ある意味悩みというか、私の力不足というか。その辺が、満足いっていないひとつなんです。

2023年に開催された日本ギリシャ協会年次総会でギリシャダンスを披露したケフィのメンバーと、ディミトリオス・カラミツォス‐ジラス駐日ギリシャ大使とギリシャ大使館職員、そして2023年を以って退任した横山進一・日本ギリシャ協会会長 ©GreeceJapan.com/Junko Nagata

そうした思いを含め、ケフィの活動を広く周知するという意味では、現在はTwitterやInstagramなど様々な方法がありますが、ケフィではウェブサイトを通じて行っておられますね。

私としても、いろいろはできないので、ウェブサイトだけに任せてしまっているんですけれども…やっぱり、理解してもらうにはこっちももっと発信しなければいけないところではありますね。待つのではなく、こっちから歩いていかないと。あと、向こうがどういう反応であっても、断られようと、試みは続けていかないとね。

次の公演はいつに予定されているのでしょうか。

毎年、新宿文化センターで「国際都市新宿・踊りの祭典」っていう世界の踊りを披露するイベントがあるんです。そこに毎年出演させてもらっていたんですけれども、今年は改修工事のために開催されない(※改修工事のため2023年11月1日~2025年9月30日(予定)まで長期休館)んです。

そんな中、ここ1年以上なんですけれども、だいたい月1くらいで行っている公演がありまして…万座温泉の日進舘といって、それは標高の高いところにある宿なんですけれども、そこでは周りに何もないもんですから、夜に40分くらい「カルチャーライブ」っていうイベントをやってるんです、毎日。夜8時から40分間で、音楽はジャズ系が多いんですけれども、そこにケフィも月1くらいで出させてもらっています。そこで40分間ギリシャのダンスだけをやって、ご紹介しているんですけれども、興味のある人だけがフロアに集まって来るとはいえ、皆さん他に何もないものですから、それなりに満席になっちゃうんですよ。

そういうところに来てくださる方たちの中には、体を癒したいと思われたり、病気を抱えている方もいらしてるみたいで、ここに来ると、気分がよくなって病気が良くなった気がすると、そういうお客さまからの生の声が聞くことができるというのが、今までの公演と違った感じで…客席も近いですし、一体感があるんです。ですから、こちらもただ見せるという訳ではなく、会場一体をケフィで包みたいと思って…目的はここをケフィの会にする、というイメージで行くんですね。それが今までになかった感覚かなと。

これまでの舞台っていうのは、「私たちはケフィです、見てください。こういうのを踊れます」っていう感じなんです。それが、1年前くらいから万座温泉の公演が始まって、今までと違う思いを毎回感じてきているんです。そうなると、その感覚が楽しみというか、やりがい…そういったものに変わってきていると。踊りって、「ギリシャの踊りがこうだから」っていうものなのか、ケフィっていう名前で意識してるからなのか、どうなのかわかりませんけれども、会場で一緒にともに手を繋いだり、ともに肩を取り合うような感じにできるものが、ギリシャの踊りにはあるんだなと。そういうパワーがあるというか、そういうエネルギーというか、そういうものが存在してるんだということを知りました。

他の国の踊りをしていないのでわからないんですけれども、他もそうであればそうなのかも知れないんですけれども、後半になればなるほど、最初は戸惑ってしまうんです…ギリシャの踊りっていうと。聞いたこともないし、ステップも同じことの繰り返しだし。40分もつんだろうか、と思ったんですけれども、そうじゃないんです。本当にギリシャに申し訳ないことをした、そんなふうに最初に不安に思って、と。山場があって見せ場があって、という踊りじゃないですから、申し訳ないけど不安があったんです。でも、それはとんでもないことだったって。むしろ、後半の方がどんどん盛り上がってきちゃって、向こうの方も乗せてきてくれちゃうんですよね。こっちが後半に少しへたばるような時に応援してもらって、また更に上げてもらてっていう。そういうものを、万座温泉のカルチャーライブでは教えてもらってます。ですから、こういうものを通して、色々学ばせてもらってる感じというのはあります。

それでは、最後にギリシャの方々に向けてメッセージをお願いします。

ギリシャに関しては、感謝、感謝ですよ。本当に、こんな素晴らしい文化、歌、踊り、衣裳、それからダンスする時の姿勢と言うか、心の持ち方、心なんですよね、形じゃないんです。それをギリシャ人から学んだんです、何度か行って。そういうことで、そこに感謝です。感謝と、それから…きっとギリシャっていう国、その踊りは、日本人である自分のことを受け入れてくれる―一体として、その輪の中に入れる、そういうものであると理解したんです。そこに対しての感謝もあります。不思議と、ギリシャに行くと笑顔になれるし、元気になれるし、自分に対しても人に対しても寛大というか、優しくなれるんですよね。そういうふうにさせてくれる、そんなものがギリシャにはあるんじゃないかなと思うんです。ですから、エーゲ海の、あの素敵な海や街、食事も含めて、憧れるんじゃないかなと思います。しかも、来る者を受け入れてくれる。そういうものをしっかりと私はキャッチしたので、だから感謝でしかないんです。

ありがとうございました。来年、ギリシャの方々にケフィのギリシャダンスを披露する機会のあることを祈っています。

ケフィ公演の映像

「ギリシャダンスを楽しむ会 ケフィ」公式ウェブサイト

永田 純子
永田 純子
(Junko Nagata) GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

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