(文:永田純子)
ブズーキやバグラマといった楽器のほかにも、ギリシャには様々な伝統楽器が存在します。その一つが、ギリシャ語でサンドゥーリと呼ばれる打弦楽器です。
今回ご紹介するのは、数々のサンドゥーリ使いの中でも現在28歳にして既に15年のキャリアを誇る女性音楽家アレティ・ケティメです。
1989年(平成元年)アテネ生まれのケティメは、6歳の頃からギリシャの有名サンドゥーリ奏者アリスティディス・モスハスにサンドゥーリを学び始めました。モスハスは2001年に70歳で亡くなりますが、このときまだわずか12歳の彼女の優れた才能を見出し世に出したのが、ギリシャの男性トップ歌手、ヨルゴス・ダラーラスその人だったのです。
2002年(平成14年)ダラーラスはアテネの有名ライブハウス「ジゴス」で行われていた自らのライブにケティメを出演させました。ギリシャ人なら誰もが知るダラーラスに見いだされたスターとして脚光を浴びると同時に、その確かなサンドゥーリの腕と歌唱力はギリシャ中の人々を驚かせました。この時のダラーラスのライブはアルバム「アポ・カルディア(心から)」としてリリースされ、ダラーラスの人気も相まってゴールドディスクに輝きました。
翌年2003年には初のソロアルバム「ト・トラグディ・ティス・アレティス(アレティの歌)」で鮮烈なアルバムデビューを飾った彼女は、続く2004年に開催されたアテネオリンピックの開会式の演奏に大抜擢。サンドゥーリの演奏でギリシャの歌「メス’ トゥ・エゲウ・タ・ニシア(エーゲ海の島々のなかで)」を披露、その存在は世界に知られるようになったのです。
[ 2004年のアテネオリンピック開会式での演奏の様子 ]
今やダラーラスに見いだされた天才少女という枠組みを超え、伝統音楽からライカまで、サンドゥーリの音色とともに様々な歌を歌いこなし、伝統楽器としてのサンドゥーリに新たな可能性を生み出したケティメの次なる一歩は、何とヨーロッパ各国の代表が競う歌の祭典・ユーロビジョンソングコンテストへの挑戦です。
5名のギリシャ代表候補の一人として、今年2月16日(金)の国内最終選考にギリシャ語で歌う新曲「ミン・クセフナス・トン・イリオ(don’t forget the sun)」を引っ提げて挑む彼女の更なる活躍が期待されるところです。
[ ユーロビジョン参加曲「ミン・クセフナス・トン・イリオ(don’t forget the sun)」のインタビュー映像 ]
【CD Data(※文中の紹介順)】
「Από καρδιά(アポ・カルディア)」/ヨルゴス・ダラーラス(Minos-EMI/2002年)
「Το τραγούδι της Αρέτης(ト・トラグディ・ティス・アレティス)」(Minos-EMI/2003年)