
オーストラリア・メルボルン在住のアナスタシオス・タミス教授(Anastasios M. Tamis)により2011年に出版された「Greeks in the far orient(極東のギリシャ人)」は、文字通り日本を含めた極東の国々に生きたギリシャ人たちの足跡を辿りその生きざまを明らかにした興味深い書籍である。
この書籍について、タミス教授の研究補助者として日本における調査・情報収集に約1年もの間協力された日本在住のギリシャ人フェイ・サバイディス氏にお話を伺うことができた。
「タミス教授の書籍のため、私は日本在住のギリシャ人へインタビューを行うとともに、1973年発足の日本ギリシャ協会の会報をはじめ、国会議事堂図書館、国立公文書館、正教会などから19世紀後半から今日に至るまでの貴重な資料をご提供いただきました。同時に中国・韓国・フィリピンでも私と同様研究者たちが情報を集め、結果集まった驚くほど多くの情報をタミス教授はパズルのように一冊の本にまとめ上げたのです。
今回の調査活動の中で最も私の印象に残っているのは、慶応大学創立者・福沢諭吉氏のご一家と、現在90歳でオーストラリア在住のギリシャ人バイロン・テオファニス氏との交流にまつわる感動的な再会です。ここで本の内容を詳しくお話しできませんが、50年以上に亘る日本への思いを胸に2010年に再び日本を訪れられたテオファニス氏と福沢ご一家との再会の場面に立ち会わせていただけたのは、本当に光栄な瞬間でした。」
またサバイディス氏は調査を通じ、ギリシャと日本の友好の礎を築いた多くのギリシャ人との出会いについて次のように語っている。
「テオファニス氏以外にも、60‐70年代に日本で活躍されたギリシャ人の方々数人が今もなお日本で暮らしておられることを知りインタビューさせていただいた時は、感動のあまり鳥肌が立ちました。日本で成功されたビジネスマンや多くの海運関係の方々。ある方はギリシャに戻られ、また日本で人生を終えられた方々もいらっしゃいました。その方々とは横浜の外国人墓地などでお会いすることができます。」
書籍には多くの写真が掲載され、当時の様子をつぶさに知ることができる。
(書籍は英語のみ。)