観光客数において減少傾向にあるギリシャに対する日本の関心を今一度呼び起こし、アテネ‐東京間の直行便の再就航を目指すとともに、観光業における二国間の協力関係の強化を図る-。これは、ギリシャのエレナ・クドゥラ 観光担当副大臣が今回GreeceJapan.comの独占インタビューに対して語った計画の一部だ。
クドゥラ観光相が日本について特別な想いを抱き、大臣として具体的な計画を描くには理由がある。
政治家として活躍する以前、ギリシャ初の、そしてもっとも著名なギリシャ人トップモデルとして活躍したそのキャリアの中で、世界にその名を知られる資生堂の国際的な広告宣伝のイメージモデルとして長年モードの世界に君臨し、日本の美意識を自らの存在感をもって表現しつつ、数え切れないほど日本を訪れた経験を持つからだ。
モデルとして活動する以前には、ギリシャ陸上界のトップアスリートとして、特に走高跳びと100mハードル競技で数々の賞に輝くとともに、またモデルとして活躍したのちには女性誌の編集者としても活躍している。
「文武両道」という言葉がふさわしいクドゥラ氏に、任期2期目の今、その想いを率直に語っていただいた。
聞き手 : 永田純子(Junko Nagata)
観光業がギリシャにとって、経済危機からの脱却と国家の発展に寄与する最も重要な産業であることは誰もが認めるところです。ギリシャの観光業のために、あなたは現在どのような計画と展望を持たれているのでしょうか。
(クドゥラ観光担当副大臣)
観光業がわが国の発展の原動力であることは、ギリシャのGDP(国内総生産)の約20%を占め、また100万人以上の直接・間接的な雇用を生み出していることから見ても明らかです。
ギリシャでは2015年に世界中から2,550万人の観光客を受け入れましたが、これは前年2014年と比較して少なくとも8%増加しており、金額にして145億ユーロ、前年度比で10億ユーロの増収を記録しています。この記録的な数字は、我々がこれまで行ってきた新たな力強い国家戦略の結果であると言えるでしょう。観光シーズンを拡大し、直行便の就航を含めた様々な施策をもって海外における新規市場を開拓するとともに、様々な形の観光を推進しています。
ギリシャ国内の新たな観光の目的地(デスティネーション)を紹介し、また1年12か月を通じて高い付加価値を持つ新たな観光商品の開発に力を注いでいます。共通したプロモーションの実施と観光業の促進のために各地方自治体、観光関連団体、民間部門と協力し、法令及び規制の枠組みを強化し、企業活動と投資を支援しています。
このようにして、ギリシャの観光業は国際的に高いスタンダードな品質を保った真の体験を提供する新たな時代に進むことが可能となったのです。そんな我々の狙いは、将来ギリシャが今後世界5つの優れた目的地(デスティネーション)の1つとして認知されることです。
ギリシャをこよなく愛する日本人は多いにも関わらず、訪問客数は伸び悩んでいます。ギリシャ銀行(国境調査)の発表によれば、2015年上半期にギリシャを訪れた日本人は3,455人と、前年2014年と比較して73.8%もの減少という結果を示しています。この減少の原因は何であるのか、また東京・アテネ間を結ぶ直行便がない現在、日本人観光客の増加のためにどのような施策を考えておられるのでしょうか。
(クドゥラ観光担当副大臣)
ギリシャを除くシェンゲン領域内の各国からギリシャに入国した日本人観光客数を含めていない今回の発表の数値は、実際の数値より大幅に低くなっています。もちろん、もっとも大きな問題は二国間が直行便で結ばれていないことであり、これが存在していれば状況はもっと異なっていたことでしょう。
過去二国間には直行便が存在し、日本人がギリシャとその歴史、そしてその文化に大きな関心を寄せていたことを鑑みて、我々はこの関心を再び呼び起こしていきたいと考えています。現在アテネ・東京間の直行便の将来的な再就航に関するあらゆる可能性を調査するとともに、日本のツアーオペレーター及びジャーナリストに対し、ファムトリップを通じてギリシャ国内の様々な地域を紹介しています。
こうして日本におけるギリシャの存在感を高めつつ、二国間の観光業における協力関係を促進するとともに、さらに多くの日本人に我が国の類まれな美しさを知る機会を得ていただきたいと考えています。
ギリシャの観光業の促進のために、また日本からの投資の誘致のために、日本への訪問を計画されていますでしょうか。
(クドゥラ観光担当副大臣)
現時点で私の日本への訪問は計画されていませんが、短期・中期的に観光客の増加と投資拡大の観点から日本の関心を引き付けるためにどのような施策を取るべきか、あらゆる可能性と取組みについて詳細な調査を実施しているところです。観光客増加のための優れたインフラを整備し、観光にこれまでにない体験を求める訪問客の様々な要求に応えるとともに、旺盛な消費意欲を持つ観光客をさらに誘致するために、高品質の観光商品を提供していきたいと考えています。
これは、政治的安定と経済的安定性のもと、友好的かつ外部に開かれた企業活動のための環境を提供しながら、新たな革新的な投資を支援するための政府の戦略的な決定によるものです。数多くのチャンスに満ち、また新たな投資活動を行うに理想的な時期を迎えた今、我々はギリシャの観光市場における大きな可能性を皆さまに精査していただくため、日本の方々をお招きしたいと考えています。
ギリシャを訪れたいと考えている私たちGreeceJapan.comの読者から、なぜギリシャは、EUの他の国々または近隣の各国に対する競争力を減少させる結果を招くような、観光業における付加価値税の増税を実施したのかという疑問が寄せられています。
付加価値税の増税を打ち消し、このような状況下でもあえて観光客がギリシャを訪問先として選択するために、どのような施策を考えられておられるのでしょうか。
(クドゥラ観光担当副大臣)
これは債権者と我が国の債務の枠組みの中とで受け入れた必要な決定の一つでした。しかしながら、観光業は我が国の最優先事項であることから、競争力のある商品・サービスの価格を維持できるよう、また同時に高い品質のおもてなしを提供できるよう、企業活動を支援するための代替策の検討にすでに着手しています。
我々は民間部門及び観光関連団体との密な連携を維持していますが、日本の皆さまには自信をもって、ギリシャの市場はこれまでも、そして今も、2016年には再び多くの訪問客に訪れていただけるよう、また我が国の素晴らしい美しさと温かくユニークなおもてなしを安心して選択していただけるよう、取り得るあらゆる対策を実行してきたことをお伝えしたいと思っています。
ここで少し話題を変えさせてください。
あなたはトップモデルとして初めて国際的なキャリアを築いたギリシャ人であり、またセルジュ・ルタンスのミューズとして資生堂で長年に渡って活動を続けられたことから、日本に対する特別な思いを持っておられることと思います。その活動について、また特に日本との関わりから得たあなたの経験についてお話しいただけますか。
(クドゥラ観光担当副大臣)
資生堂のような各国で成功を収める世界的なブランドに国際的な広告宣伝の顔として選ばれ、またこれほどの長期間に渡って大きな信頼を寄せていただいただけでなく、芸術的かつ繊細な美的感覚を持つ驚くべき写真を通して、モードの世界に一時代を築いたセルジュ・ルタンスのような優れた偉大な芸術家とともに活動できたことは私にとってこの上ない名誉です。
日本には数え切れないほど訪れましたが、どの時も一、二か月ほどの期間滞在しました。日本人が完璧なプロフェッショナルであり、また献身的なパートナーであることは間違いありません。
そんな日本は私が特に愛する国のひとつであり、つねに大きな尊敬の念と深い敬意とともに思い出される国なのです。その他に類を見ない教養と生まれ持った礼儀正しさ、高い精神性と人生のあらゆる事象を刻み込んだ文化は私を魅了してやみません。
今回はGreeceJapan.comのインタビューを受けていただき本当にありがとうございます。最後に、ギリシャでの休暇を考えている日本の皆さんに向かって一言お願いいたします。
(クドゥラ観光担当副大臣)
ギリシャは安全で魅力的な国のひとつです。数多くの島々と美しい内陸部のスポット、ユニークな歴史と文化、素朴さと華麗さ、温かく親切な人々、オリジナリティ、そして時を経ても変わることのない魅力は、人生の旅そのものです。
訪れた者をまるで自分の家にいるかのように感じさせる気兼ねのなさと親しみの感覚をもたらすことのできる目的地(デスティネーション)はそう多くはありません。私たちは、皆さんを温かくお迎えし、忘れることのできない経験と素晴らしい思い出をその手に得ていただくために、日本の友人の皆さんがギリシャを訪れる機会を心からお待ちしています。