ギリシャの影絵劇・カラギョージスの初期公演を翻案した『日本から来た叔母さん』公演

GREEK

2023年8月6日(日)ギリシャ北部の街スフリにあるピレウス銀行グループ文化財団の博物館のひとつであるシルク博物館で、ギリシャの影絵劇・カラギョージスの公演『日本から来た叔母さん』が行われた。

この影絵劇公演は、写楽の肉筆画が発見されたことで知られるギリシャ・ケルキラ(コルフ)島のコルフ・アジア美術館の収蔵品を、ピレウス銀行グループ文化財団とコルフ・アジア美術館の共催及び在ギリシャ日本大使館の後援のもと展示する特別展「Like Silk(2023年6月10日8日(日)~11月13日(月))」の一環として開催されたもの。

プログラムはカラギョージス遣いのアポストロス・ドムヅィディス(Apostolos Domtzidis)と、舞台助手のナターサ・ミハイリドゥ(Natasa Michailidou)からなる影絵劇団「カラギョージスの物語」が手掛けており、ドムヅィディスがしたためた物語に基づく本作品は、現代ギリシャの影絵劇の初期の公演を翻案したものだという。

開演の時を待つ様々な年代の観客たち

本作『日本から来た叔母さん』は、愛する女性と婚約するため、「日本にお金持ちの叔母がいる」と嘘をつく貧しい青年の物語だ。しかし、二人の結婚式が近づいたある時、花嫁の父は青年の叔母に会いたいと言い出す。そこでカラギョージスは、愛する女性の父親に不信感を抱かれないよう、着物を着て女装し、日本の叔母のふりをする、というストーリーだ。

様々な年代の観客らの前で行われた公演は、現代ギリシャの影絵劇の伝統と日本の芸術を融合。 叔母に扮したカラギョージスは、シルク博物館に展示されている本物の着物を着ているかのようにデザインされ、上演中は様々な日本語がちりばめられ、これをカラギョージスが翻訳するたび客席は笑いに包まれた。

着物をまとったカラギョージスの影絵人形を操るアポストロス・ドムヅィディス
スフリのシルク博物館で開催の特別展「カラギョージスのすべて」の様子

影絵劇団「カラギョージスの物語」は、公演のほかワークショップ、講演会、セミナー等を行いながらギリシャ全土を巡回している。 今回は現代ギリシャの影絵劇とその長い歴史の芸術的側面を解き明かす特別展「カラギョージスのすべて」が合わせて開催され、カラギョージスについてより深く知ることができるという。特別展では、カラギョージスからインスピレーションを得た現代作品や、影絵劇団の豊富なコレクションが多数展示。 スフリではシルク博物館で開催され、数多くの生徒たちが訪れた。

カラギョージスは現代ギリシャに伝わる影絵人形劇だ。ギリシャ人にとって、夏の夜、広場の一角などで上演されるこの影絵劇は、幼い頃の思い出の核をなすとも言うことができるものだ。その主役たるカラギョージスは、ギリシャとトルコの伝統的な影絵劇の中心人物だ。

その起源ははっきりしないが、恐らく中央アジアから極東に及ぶ地域で、遊牧民族らがテントの中で上演したものと言われており、中国やインドネシアに伝わる影絵人形劇と同じルーツを持っているという。カラギョージスは東から西へと旅しオスマン帝国に辿り着き、のちギリシャに受容された。ギリシャにおけるカラギョージスの上演を示す最も古い証左は1809年に遡ると言われている。

影絵劇団「カラギョージスの物語」ウェブサイト
http://www.talesofkaragiozis.gr/

永田 純子
永田 純子
(Junko Nagata) GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

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