「GreeceJapan.com」へのインタビューに応じて頂き心から御礼申し上げます。小泉総理大臣の御活躍を新聞でよく目にする一方、電子メールによるニュースレターの「らいおんはーと」で総理からのメッセージをよく読ませて頂いていますが、総理の国民との直接・密接な意思疎通に感銘しております。これは広い意味で古代ギリシャの政治手法を我々に想起させます。
(小泉総理)今年は、アテネ五輪の開催、サッカー欧州選手権EURO2004のギリシャ優勝など、まさに“ギリシャの年”という感じを受けています。
蜷川幸雄さん演出のギリシャ悲劇「オイディプス王」のアテネ公演が成功したことも、とても嬉しく思っています。
今回のオリンピックは、108年ぶりにアテネに五輪が帰ってくる記念すべき大会であり、日本を始め世界の人々の目が貴国に向いています。
昨年、私は貴国を訪問し、ステファノプロス大統領とお会いしましたが、古代オリンピックにまつわる多くの話、例えば、古代オリンピックの勝者に対する賞品は名誉を表すオリーブの枝であったことや、勝者を輩出した都市国家はそういう強い人物が町を守ってくれるということで、城壁を壊して勝者を迎え入れたことなどを伺い、感銘を受けました。
オリンピックの花形競技といえばマラソンです。マラソンは日本でも人気のスポーツで、マラソン発祥の地であるギリシャとマラソン愛好国である日本との間では、マラソンを通じた市民レベルの交流が進んでいます。
アテネ五輪では、サッカーを始め、なるべく多くの競技で日本とギリシャの選手、チームが決勝で顔を会わせることができるように祈っています。アテネ五輪を通じて、全世界に向け平和のメッセージが発信されることを願っています。
以下に頂いた質問のいくつかにお答えします。
昨年貴総理は日本・EU首脳会談の機会にギリシャにいらっしゃいました。それ以降、日本・ギリシャ共同行動計画の枠組みにおいて、我々の関係に進展はありましたか。
(小泉総理)2002年、私は訪日したシミティス首相(当時)とともに、「日本・ギリシャ共同行動計画」に署名しました。日本・ギリシャ間の将来に向けた具体的協力を示すその共同行動計画は、両国政府により着実に実施されてきています。
国際問題については、特に、バルカン情勢に関して両国間で緊密な協力、意見交換が行われています。
テロ対策のような地球規模の問題に関しても、二国間の協力は順調に進んでいます。我が国の海上自衛隊は、テロ対策特措法に基づき、国際的なテロ対策の一翼を担いインド洋で活動するギリシャのフリゲート鑑に給油を行うといった具体的な協力も行われていることは特筆に価すると思います。
ギリシャ側経済使節団が訪日するなど、経済の分野でも今後より緊密な関係が築かれていくことを期待しています。
海運関係では、両国は良好な関係を築いており、我が国の船舶関連団体は、隔年貴国で開催されているポシドニア海事博に大きな出展をしており、本年は、カラマンリス首相にも日本ブースを訪問して頂きました。
観光に関しては、オリンピックを契機にした“ギリシャ・ブーム”が我が国から貴国への観光客の増加につながるのではないかと期待しています。
明年は愛知万博が開催されますが、貴国の出展により、多くの日本人が貴国に興味を持つこと、また同博覧会を通じ、多くのギリシャ人が訪日することを期待します。
ギリシャはバルカンでもっとも安定・発展している国です。日本は同地域への投資のためギリシャの経験を利用していますか。
(小泉総理)旧ユーゴ紛争などがあったバルカン地域に投資を呼び込むために最も重要なことは、同地域における平和の定着と域内協力を推進することだと思います。日本政府は、ギリシャがバルカン地域に深い見識を有し、同地域の安定化や経済発展のために多大な努力を行っていることを高く評価しています。
本年4月、日本はEUと共催で、東京において「西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合」を開催しましたが、ギリシャ外務省との密接な協力の下、会議を成功に導くことができました。西バルカンの平和の定着や経済発展という課題に関しては、日本とギリシャが今後とも協力していく余地は大きいと思います。
両国を繋ぐ橋の役割を担った最大の行事は、日本とギリシャの文化団体・組織の共同企画により、昨年東京国立博物館及び兵庫県立博物館で開催された「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」(NHK主催)でした。同展示会を見に行かれましたか。こういった大規模な企画は両国のために必要とお考えですか。
両国の文化に関する注意深い研究によると、両国はその文明の重要性と遺産、長い歴史の他、多くの共通点があります。世界の利益に貢献するため、両国の間で観光や民族的なレベルだけではなく、両文明の深い理解と相互効果に基づく長期的な協力関係が必要とお考えになりますか。
(小泉総理)残念ながら、「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」を見に行くことはできませんでしたが、アレクサンドロス大王の足跡、シルクロードを通じたギリシャ文明の日本への伝播をテーマとした実に興味深い展示会であったと聞いています。
本年は、前述の日本・ギリシャ共同行動計画において、両国間の文化事業を活発化させることが決まっており、ギリシャにおいては、日本の伝統陶芸展や和楽器のコンサートの他、7月初旬にはシミティス前首相のお誘いもあり、蜷川幸雄さん演出の「オイディプス王」のアテネ公演など多くの文化事業が既に実施され、今後も日本関連文化事業を実施していく予定です。
今年はギリシャ生まれの偉大な日本文学家、小泉八雲(ラフカディオ=ハーン)の没後100年にあたり、故郷レフカダにおいて記念行事が行われると聞いています。
日本においても、ギリシャの民族舞踊やギリシャ人歌手のコンサート、絵画展などが駐日ギリシャ大使館が中心となり、企画、実施されています。
日本・ギリシャ両国国民は、共に長い伝統を有しており、お互いの文化に対する敬意をもっています。両国間の交流がより活発に行われれば、更に良好で親密な関係を築いていけると信じています。
-文:フィリッポス・グリジオーティス