1919年(大正8)のきょう、8月16日は我々が愛するギリシャの作家のひとり、アンドニス・サマラキスがアテネで生まれた日だ。
彼の名を不動のものとした小説『きず(日本語題/ギリシャ語原題:Το Λάθος)』は、世界のあらゆる者が読むべきであると我々が信ずる一冊であり、日本では1970年(昭和45)にディケンズほか19世紀英文学専門の英文学者・小池滋(こいけ しげる/1931-2023)氏により日本語に翻訳され、筑摩書房から出版された。
「カフェ・スポーツ」に集う特高警察をはじめとする男たちが織りなす手に汗握るサスペンスを生々しく描いたサマラキスの本作は、日本では1971年(昭和46)NHKで細川俊之・主演、山田信夫・脚本、武満徹・音楽、吉田直哉・演出により『もう一つの傷』としてドラマ化され放映。その後、小池氏の訳により東京創元社から1987年(昭和62)に再版された。
ギリシャ文学史上に文字どおり「きず」を残したサマラキスは、2003年(平成15)8月8日この世を去った。
2023年には、ギリシャ銀行によりアンドニス・サマラキス没後20周年を記念する銀貨が発行されている。