GreeceJapan.com独占インタビュー:ギリシャラブ~ギリシャ、愛、そして音楽!

GREEK

「ギリシャラブ」ー そんな名前の日本のバンドが私たちの注目を集めるのは言うまでもありません。 とはいえ、彼らは決してつい最近結成された訳ではなく、2014年に京都で結成され、独特の美意識を武器にこれまでに既に4枚のアルバムと5枚のデジタルシングルを含む7枚のミニアルバムをリリースし、現在は東京を拠点として活動している実力派バンドです。

インタビューをお願いした時、メンバーは自分たちが「たまたま」選んだ名前以外、ギリシャとはこれといった特別な関係はないと緊張していました。-もちろん、人生には偶然に起こるものなどないと言う人がいるのも確かです。

私たちはギリシャラブのメンバー、天川悠雅(ボーカル)、取坂直人(ギター、シンセサイザー)、そして守屋咲季(ベース)の3人に渋谷のカフェでお会いし、興味深いお話を伺うことができました。

インタビューに応えてくださったバンドのメンバーの皆さまに感謝するとともに、いつかギリシャで開催されるであろう彼らのライブでお会いできることを楽しみにしています。

インタビュー:永田 純子(Junko Nagata)

守屋咲季(Ba), 天川悠雅(Vo), 取坂直人(G, Syn) ©GreeceJapan.com/Junko Nagata

どのような理由から、バンド名を「ギリシャラブ」と付けられたのでしょうか。

天川:僕と、取坂の二人が兵庫県の出身で、地元でバンドを始めようかと言った時に、バンド名を決めるとなった時に、ちょうどワールドカップがあった年(※2014年のリオ大会。バンドは2014年に結成)で、日本代表と同じグループリーグにギリシャとコートジボワール、コロンビアと日本のグループリーグだった時の、ちょうどワールドカップの期間で、当時携帯電話で見たら、ニュースのトップに「グループリーグの組み合わせが決まったよ」って書いてて。その前に、バンド名について話し合った時に、「ステレオラブ(Stereolab)」っていうバンドがフランスに居るんですけども、その「ラブ」ってのは「愛(Love)」の方の「ラブ」じゃなくて、「ラボ」みたいな方の「ラブ(Lab)」なんですけど、「ラブ」っていいなっていうのがあって。「ラブ」は付けたいよねっていう感じの話はしてて。でも、話し合ってもあんまり決まらなかったところで、コートジボワールの次に対戦するのがギリシャだったんで、「ギリシャラブ」は?って言ったら、「それ、めっちゃいいね」って。そのままそれをつけて、9年間やってるっていう感じですね。

そういうわけで、「ギリシャ」がバンド名の一部になったんですね。

天川:そうなんですよ。当時は、兵庫県の三田(さんだ)市っていう、結構田舎の方に住んでました。その後僕は京都に引っ越して、京都で3~4年ぐらい前までバンド活動してて、その後東京に来たんです。取坂は地元の高校からの友達なんで、地元で、ちょっと二人でバンドを趣味とか合うからやろうっていうくらいの気持ちで始めたから、京都に行ったり東京に行ったり、こんなに本格的にやると思ってなかったんで。なんか、割と軽い気持ちでつけちゃったかなあと。

メンバーの皆さんは、ギリシャに行かれたり、ギリシャ人の友達がいたりといった、ギリシャとの関わりがあったんでしょうか。

天川:いや、インタビューのお話をいただいて結構嬉しかったんですけれども結構不安で。本当に何もなくて。でも、冗談と言うか、軽い話では「ギリシャでライブとかいつか出来たらいいね」みたいな話はしてたりするんですけども。でも本当にギリシャとの関わりはそんなになくて。

ギリシャとの関わりがないとおっしゃっていますが、例えば『聖者たち』のMVでは、途中で皆さんが青と白の衣装とセットで出られて、ギリシャの国旗をまとわれていたりしましたよね。また、『聖/俗』のMVでは、ギリシャの巫女ふうの女性が出演されていました。それに加え、2021年に設立されたレーベル名の「都市国家レコード」というのも、いかにもギリシャ的ですね。

天川:レーベル名については、なんか、ギリシャっぽいレーベルの名前にしようと思って、パッと思いついたものをつけたんです。

むしろ、今になってバンドが少しずつギリシャに近づいてきたというような感じがします。

天川:バンドをこの名前でやり始めてから、少しずつ興味は出てきていて。ギリシャでどういう音楽があるんだろうと思って調べて、レベティコを聴いてみたりとか、自分たちとしても興味は出ているっていう感じです。

ギリシャの音楽を聴かれたことはありますか?また、その中で、面白いと感じたものはありましたか?

天川:レベティコですかね。ブズーキを弾いて歌ってっていうコンピレーションのアルバムが配信されてて、そういうのを聴いたりしてます。レベティコに何で自分が興味を持ったのかっていうと、ギリシャラブっていうバンドをやっているっていうのもあるんですけれども、バンドデシネ(bande dessinée)っていうフランスの漫画でレベティコを描いている本があって、それをチラッと見たら、これは1930年代くらいの、戦争の前で、政治との関わりとか、ヒッピー的な価値観をもったギリシャの人たちが奏でてた音楽だよ、って知って、興味を持ったっていう感じです。

2023.5.24リリースの最新配信限定シングル『ABCD』は、東京駅丸の内口の周辺で撮影されていましたが`、その時の衣装で、宇宙服を着ておられたのが印象的でした。

天川:あれは、AからZまでのアルファベットを羅列するだけみたいな歌詞なんですけれども、これまで9年も歌詞を書いていて、歌詞を山ほど書いてきた感覚からすると、歌詞の内容に含まれる意味みたいなものが、どんどん自分の中に堆積していくというか、意味がだんだん重くなってきて、何かこう、歌詞の意味みたいなものを、なるべく排除したような歌を書いてみたいな、っていう想いがあったんです。宇宙服も、面白いなっていうのが半分、あとは、宇宙服を着て宇宙に行ったら、他の星に行ったら、自分たちも異星人だし、異星人が地球に来ても言葉とかまったく分からない人っていうことになるじゃないですか。そういう感じのイメージで、宇宙服を選びました。

ここでちょっと話題を変えようかと思います。バンドの皆さんは、どのようなきっかけで音楽の道を選ばれたのでしょうか。

天川:僕は、最初ドラムをやっていて。ドラムをやり始めたのは高校生の一番最初なんですけれども、その時最初に行った全日制の普通の高校を、1年生の半分くらいで辞めちゃって。逆に言うと、やることがないと。その後通信制の高校に行ったんですけど、暇なんで。大人だったら働いたりとか色々あるんですけど、高校生なんで働くこともできないし。やることもないんで、音楽をやってたっていう感じですかね、正直。好きなアーティストはイギリスのBlurで、90年代のブリットポップって言われてた辺りのバンドが一番好きで、そこから音楽に入ったっていう感じです。

取坂:僕は、中学生の頃にギターを買ったんですけど、買ったのは、小学6年生の頃に「めざましテレビ」を見ていたらアジアンカンフージェネレーションっていう日本のバンドのPVみたいなのが一瞬流れるんです。それで興味を持って。それまで、ポップスしか知らなかったんですけど、ロックを聴いて「なんじゃこら」って思って。それが、きっかけにはなってると思います。父親がビートルズとかジャズとか聴いてたんですけど、それもあって、イギリスの音楽とかを聴くようになって。高校に入ってバンドを組みたいなってなって、バンドを組んで…そこからは、普通に…というか、これまで続けてます。

守屋:私は、音楽というか、もともと楽器とかやるのは好きで、ピアノとか習ってたりとか、小中学校で吹奏楽部に入っていたりしてました。母親の影響でスピッツとか好きで、当時流行ってたバンプオブチキンとか聴いていて。それで、どうしてなのかは忘れましたけど、ベースがカッコいいなと思ったんです。高校に入って、吹奏楽部に入るのをやめて、軽音楽部に入って、バンドやろうって感じで。ベースを弾くのとか、音楽をやるのが好きで。このバンドに入ったのは、前のメンバーの方が抜けてメンバーを募集してたんです。それまで私は当時二人(※天川・取坂)とは何の面識もなくて。私は、ギリシャラブを知っていてライブに行ったりとか曲を聴いたりとかしてたんですけど、メンバー募集をしてるらしい、ってことをTwitterか何かで聞いて、これは入れたら楽しいかもしれないな、って思ったら、入ることになって。

日本では様々なシーンでライブを行われていたと思いますが、海外でのライブの経験はおありでしょうか。

天川:ないんです。やってみたいな、と思いつつ、やってないというか。ギリシャで呼んでいただける機会があれば、ぜひ行きたいなと。

次の新しいアルバムはいつ頃に考えておられるのでしょうか。

天川:アルバムは未定なんですけれども、ミニアルバムくらいのやつを、今年中に出せたらな、ってくらいのスケジュール感で動いています。曲も、何曲かレコーディングしたりしていて、シングルも多分来月、再来月くらいには出したいな、という感じてすね。

新しい楽曲はどんな感じのものになるのでしょうか。

天川:次に出す曲は、どんな感じかな…でも、ちょっと、ギリシャ神話と関係あるかも知れないです。歌詞としては、『王様(Alternative)』みたいな、言葉の羅列じゃなく、意味のある方に寄ると思います。映像については、『ABCD』は屋外で結構撮ったんですけれども、今回は撮影用のスタジオを借りて、メンバーが演奏したりするシーンを多めに使う予定です。

印象的なMVが特徴かと思いますが、どなたがコンテを描かれているのでしょうか。

天川:コンテは描いてないんですけども、内容はほぼ僕が考えて、自分たちと友達で撮影を手伝ってくれる人たちと撮って、自分たちで編集したりして。大体、D.I.Y.ですね。

ということは、『聖/俗』『聖者たち』『退廃万歳』といったビデオで、アイデアや、こういう衣装を着ようとか、こんなセットで撮影しようとかいったものは、みんな皆さんで考えられたと。

天川:そうですね。制約も結構ありますけど、映像をやってる人とかに頼んでいる訳じゃないので、そういう意味で、バンドとしての統一感は出てるのかな、という感じはあります。

『聖者たち』のMVでは、ギリシャ国旗にちなんだ衣装やセットも印象的ですが、それに加えて、馬がキービジュアルとして出てくるのは何故でしょうか。

天川:馬は…なんかもう、自分たちでやるようになってからは、ほぼ毎回馬を出していますね。出来れば、本物の馬を出したいなと思っていて。難しいですけども。

今後のライブの予定はいかがでしょうか。

天川:ライブは、まだ発表できるものはないんですけれども、今はミニアルバムの制作期間っていう感じで。秋くらいから、ライブもやっていきたいなと思っています。

バンドとして、コンスタントに作品を発表される中で、年を経るごとに、新しいアルバムを出す度に、皆さんがやりたいことがはっきりしてきているんじゃないかと思うのですが。ビジュアル的にも、バンドとしての美意識が固まって来ているのではと。

天川:まさに、その感じだと思います。最初は本当に何の考えもなく、何のコンセプトもなく、ただ友達とバンドをやろうという感じだったのが、どんどんどんどん音楽の世界とか、自分の中でも深まっていって、こういうことをやってみたいなとか、そういうことがどんどんどんどん定まって来た9年間なのかなと思います。

ギリシャのブズーキなどをライブや録音で使おうと思われたことはありますか。

天川:全然、使えると思います。是非いいチャンスがあれば使いたいなと。

では、インタビューを終えるにあたって、皆さんから一言ずついただけますでしょうか。

天川:今回のインタビューのお話をいただいた時に、すごい嬉しくて。9年間この名前でやってるんですけども、意外に、普通に日本の方にバンド名のことを聞かれたりとか、そういう話はあっても、直接ギリシャの方からそういうお話を貰ったり、聞かれたりってこともなかったので、嬉しくって。Twitterとかで、結構ギリシャ人の方で日本の音楽の好きな方とかが聴いてくれてたり、ギリシャ語でコメントしてくれてたり、っていうのもたまにあったりするので、それもすごい嬉しかったんです。このインタビューでそういう方というか、ギリシャの方にも僕らの音楽を聴いてもらえたら嬉しいです。

取坂:言葉の組み合わせの良さだけでやって来たのかなと思っていたんですけれども、結構周りからもバンド名を褒められることが多くって。このバンドで、一番いいのはバンド名なのかなって思ってます。「ギリシャラブ」って言えるほど、ギリシャについて知ってることは少ないんですけど、でも、これがきっかけでギリシャの方に、直接お話はできないんですけれども、ギリシャと、このインタビューを通して繋がりが出来るのが、すごい不思議な気がします。

天川:SNSで、ハッシュタグ「#ギリシャラブ」とかで検索すると、若い女の人とかが島とかで自撮りしてる写真とかが出てきたりします。

守屋:このインタビューのお話をいただいた時に、メンバーのみんなそうだと思うんですけれども、ギリシャにそんなに詳しくないけど大丈夫かな、と。ギリシャについては、学校で習うようなことしか知らなくて。そこから、ギリシャのことを調べたりするうち、行きたいなと思うようになりました。

ありがとうございます。皆さんのライブをギリシャで観ることができる機会をお待ちしています。

「ギリシャラブ」公式ウェブサイト: https://greece-love.jp/

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永田 純子

永田 純子

GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

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