2021年12月末駐日ギリシャ大使としての任期を終えたコンスタンティン・カキュシス氏。重要かつ前例のない問題に直面した在任中の様々な出来事について、離日前にGreeceJapan.comに語っていただいた。カキュシス氏に心から感謝申し上げるとともに、外交官として更なる成功を得られることをお祈り申し上げたい。
インタビュー:永田純子(Junko Nagata)
あなたの日本における在任中には、東京2020オリンピック・パラリンピック大会(2021年)、1899年の「ギリシャ・日本修好通商航海条約」の締結から120周年記念(2019年)、社会・経済に大きな世界的な影響を与えた新型コロナウイルス感染症の予想もしないパンデミックなど、様々な出来事がありました。特に、あなたが前例のない、非常に複雑な状況を処理するために呼び出されたように、日本では想像もできなかった日々を送られたのではと思いますが。
確かに在任中は、新しい天皇陛下の即位やオリンピックの延期と翌年の開催と言った歴史的な出来事と重なりました。世界に蔓延した新型コロナウイルス感染症は、個々の生活にも、また国家間の交流においても、新たな状況を生み出しました。このことで我々は皆、新しいコミュニケーションの方法を探す必要に迫られ、そしてそのチャンネルを開けたままにしておかなければならなくなりました。パンデミックであろうとも、新たな条件の下でさえ人生は続いていくのだと証明しようではありませんか。ギリシャ独立200周年の祝賀イベントは、写真と刺繡の展示会を除いて、ほぼオンラインでの開催となりましたが、いずれにせよ我々大使館職員は日本とギリシャ双方の国民への任務を果たすことができました。
ギリシャと日本の二国間関係は、今日どのような状況にあるのでしょうか。
二国間関係は当然ながら大変良好です。なぜなら両国は自由民主主義を掲げる政治体系や、リベラルで開かれた市場経済といった経済体制の点で似通っており、また同じ方向性を持つ海運大国だからです。
2018年に日本での職務を引き継がれた時から今日まで、政治的および外交的レベルで最も重要な活動および交流は何であったと思われますか。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、公式訪問の中止といった結果をもたらしたように、計画に多くの変更を余儀なくさせました。
在任中にはカトルガロス外務大臣や、ピクラメノス副首相が日本を訪問し、フラゴヤニス外務副大臣率いる政府レベルの訪問では、ツァキリス開発投資副大臣とトマス環境エネルギー副大臣が共に来日しました。 また東京オリンピック・パラリンピックにはギリシャを代表し、アヴゲナキス・スポーツ副大臣が2度日本を訪れました。
貿易分野に関して、コロナウイルス禍の下でのギリシャの輸出はどのような状況にあるのでしょうか。ギリシャから日本へどのような製品が輸出されているのでしょうか。
コロナ禍ながらギリシャの輸出は大きく飛躍し、過去2年間(2019年と2020年)の貿易収支は黒字です。特に2020年は87%も増加しました。輸出品の中でも特に医薬品(2020年は全体の65.7%)とたばこ(2020年20%)が大きな割合を占めています。他にもギリシャから日本への輸出品目には、綿花、果実、果物の缶詰、大理石、オリーブ油、ベーカリーや菓子製品、パスタ(32%増)、フェタチーズ(8%増)、金属板 / アルミニウムストリップ、アルミシート、石油製品などがあります。
最近の調査によれば、投資先としてのギリシャのイメージは大幅に向上しています。これに呼応する形で、ギリシャへの投資に対する日本企業の関心は高まったのでしょうか。また、現在進行中の日本企業による新しい投資案件はあるのでしょうか。そして、日本企業にとって、ギリシャにおける主要な投資機会は何でしょうか。
過去3年の、特に2018年にあった大きな投資は、JTインターナショナル(日本たばこ産業の国際部門)が、実業家として有名なイヴァン・サヴィディス氏所有のロシア企業ドンスコイ・タバック社を買収したことです。これによってその系列会社であったギリシャのSEKAP 社(ギリシャたばこ産業協同株式会社)が日本の支配下に入りました。
現在ギリシャでの主な投資の機会はエネルギー、特に再生可能エネルギー源、電力ネットワーク、環境、ハイテク、ロジスティックス、運輸などの分野に見られ、加えて、造船と船舶も大きな注目を浴びています。ギリシャはヨーロッパ南東部と中東の広い地域における、生産と流通の拠点(ハブ)と成り得るでしょう。
あなたの在任中、駐日ギリシャ大使館は様々なイベントを主催・後援して来られましたが、その中からいくつか挙げていただけますでしょうか。
残念ながら新型コロナの影響で開催に至らなかったイベントも多々ありましたが、「ギリシャ・リセウム」伝統舞踊の公演や、パノス・カラン氏のピアノコンサート、そして上野でのギリシャ伝統的「刺繡展」を挙げたいと思います。
コロナ禍のもと日本で日々を過ごされておられましたが、あなたのご意見では、日本での感染者数と死者数がその他の先進諸国と比較して少ない理由は何であるとお考えですか。世界のその他の国々が、パンデミックに対処する日本の施策から学ぶことができるものはあるのでしょうか。
コロナ対策に関し日本には2つの大きな利点があります。それは島国であること、そしてそこに日本人が住んでいると言うことです。つまり日本人は公共の場でマスクを着用し、家の中では靴を脱ぐ習慣があります。そして何より規律正しく、強制措置を施さずとも政府の推奨する事を守る国民です。日本が島国である特性と入国制限措置とが組み合わされて、症例を低く抑える事に役立っているのです。
日本での日々の中で、あなたが最も恋しく思い、懐かしく思い出されるだろうとお考えのものは何でしょうか。日本とその人々から受けるあなたの個人的な印象について、私たちの読者にお教えいただけますか。
私が日本で感動し、帰国したら恋しく思うだろうものは、日本の人々です。彼らの内から出る礼儀正しさには感謝の念さえ抱きます。 特に人をもてなす時のお辞儀の仕方には、まるで花が閉じてまた開くような印象を何度も受けました。私は必ずやこの思い出を胸にギリシャへと発つでしょう。
ありがとうございました。あなたの外交官としてのキャリアの次なる場での活躍を心よりお祈り申し上げます。
2021年12月・東京
Photos:Junko Nagata ©GreeceJapan.com