GreeceJapan.com独占インタビュー:『PITY ある不幸な男』バビス・マクリディス監督

バビス・マクリディス監督

ギリシャ新進気鋭の映画監督・バビス・マクリディス監督の『PITY ある不幸な男』が2021年10月8日(金)から日本全国の映画館で公開される。恵まれた環境と職業をもつ一人の男が、妻の昏睡がもたらす甘美な「不幸」にひたるうち、自分自身を見失い、ついには最悪の結末に突き進む―。そんな自身の長編2作目となる本作品を制作し、2018年オデッサ国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞したほか様々な賞に輝き国内外で高く評価されているマクリディス監督に、GreeceJapan.comは独占インタビューを敢行。本作品について、ギリシャ映画について、そして自身と日本映画との関わりについてありのままを語ってくれた。


インタビュー:永田純子(Junko Nagata – GreeceJapan.com)

今週8日(金)から日本全国で『PITY ある不幸な男』の劇場公開が始まります。日本での劇場公開はどのようにして実現したのでしょうか。また、今回の上映はあなたにとって日本の観客と出会う初の機会なのでしょうか。

 今回『PITY ある不幸な男』の日本での劇場公開が実現したのは、日本の配給会社の方々がこの映画を観て、日本での劇場公開を決断したことによるものです。しかし私たちとしては、まったく別の側面から日本での公開を嬉しく思っています-日本の劇場に初めてこの「哀しみ」が拡散されることになるのですから。私は日本の観客の反応に興味深々です。なぜなら知っている限り、私の作品がこれまで日本で公開されたことはありませんからね。

あなたの作品について解説してください。作品の制作者として、観客が何を観ることになるのかを教えていただけますか。

私たちの作品は、人の興味の中心でいる時、また他者の同情の受け手となる時にだけ喜びを感じ、生きているのだと実感する一人の人間のストーリーを描いたものです。そうすることによってのみ人生に意味を見出すことができ、そのためにはあらゆることを行う。彼は、哀れな人間であり続けるためには、どんなことでも行うのです。

 この作品でも、あなたはアカデミー賞脚本賞にノミネートされた脚本家エフティミス・フィリップとタッグを組まれていますが、どのようにしてあなた方二人の協力関係を成功に導いたのでしょうか。

 まず我々が話し合って決めたのは、物語のテーマとトーンです。その後制作にかかりました。脚本はお互いの譲れない点について数えきれないほど話し合いを重ねながら作られたものです。それでも最終的には何らかの落としどころを見出していますよ、なぜならお互いに尊重しあっていますから。

日本の観客は、ギリシャ映画と聞くと-例えその表現が既に過去のものであるとしても-今もなお「Greek weird cinema(ギリシャの奇妙な映画)」という印象を持っています。あなたはかつてギリシャで受けたインタビューの中で、日本にも数多くのファンがいるテオ・アンゲロプロス監督の方がより「weird(奇妙)」な映画を制作していたと、その「weird(奇妙)」な作品を人は詩的であると言っていたのだと答えています。あなたは今日のギリシャ映画をどのようにカテゴライズされますか?

ギリシャ映画は多様性にあふれたものです。様々なテーマと様式があり、ギリシャ語という、言語的な要素以外に統一的な面はないことから、「Wave(波)」と定義することはできません。それでもいくつかの作品は似ることもあるでしょう、同じ仲間たちと制作しているわけですからね。

そう、アンゲロプロスは全ての現代ギリシャ映画の中でも最も奇妙な人間だったと思います。ただ、人はそれを詩的であるとカテゴライズした。であるなら、詩的なものとは、奇妙なものなのか?-そうなのかもしれません。

日本の映画はお好きですか?どの映画監督、どの作品がお好きでしょうか。

私はこれまで数えきれないほど多くの日本のクラシック映画を観ていますが、それが私の映画のリズムや固定カメラのカメラワークに根本的な影響を与えたと思っています。黒澤明は私にフレームと、フレームの中でいかに俳優を配置するかとの関わりについて多くのことを教えてくれました。彼は今でも私のお気に入りの映画監督です。

ありがとうございました。日本での成功をお祈りしています。最後に、日本の観客に伝えたいことはありますか?

哀しみの中に身をおいてみましょう。哀しみによってのみ、幸福を理解することができるのですから。

皆さんに感謝します。-バビス・マクリディス

・GreeceJapan.com「ギリシャ映画に新たな奇才!マクリディス監督の『PITY ある不幸な男』10月に公開(video)」

 

永田 純子
永田 純子
(Junko Nagata) GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

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