
ギリシャ第二の大都市・テッサロニキのアリストテリオ大学哲学部で訪問研究員生活を送る福田耕佑が、ギリシャ滞在生活を通じた留学記をつづる「しがしが留学紀」。ギリシャ語を学ぶ方々のための教材について紹介した第9回に続き、今回第10回はギリシャ・マケドニア地方の山村を旅した旅行記です。最後に2022年京都で開催予定のプログラムの周知も!
・福田耕佑のテッサロニキ「しがしが」留学記:過去記事はこちらから!
Γεια σας(こんにちは!)。ギリシアはテッサロニキ留学中の福田耕佑です。大学のプログラムも終わり、夏がやって来ました。ギリシアでもワクチン接種が着々と進んでいるとはいえ、まだまだ旅行や観光は難しい状況です。
コロナ禍の中寄留者の見たギリシアについても書いていきたいなぁと思っていますが、今日はギリシアのマケドニア地方の山村アギオス・アンドニオス(Άγιος Αντώνιος)と特にモノピガド(Μονοπήγαδο)を訪れた話を書こうと思います。ギリシアは海や都市を訪れる人は多いと思いますが、おそらく山村に向かう人は珍しいのではないかと思います。
ギリシアの村々を訪れた時に興味深いと思わせられるのが、多くの村が民俗博物館を有していることです。アギオス・アンドニオスは約600人ほど、モノピガドは凡そ200人ほどの住民が居住し、特に後者の住民のほとんどは見たところ高齢者のようですが、そこの博物館には村のあらゆる記憶が保管されていました。

リラと「戦士」のモニュメント © 筆者提供

それでは、博物館の中をのぞいてみましょう!




モノピガドの村は、1920年代の前半に小アジアの黒海沿岸に位置するポントス地方から難民として海や山を越えて移住しにやって来たギリシア人たちが定住した山村であり、彼らがどのようにこの山奥に家を建てて村を作っていったのか、そして今日までどのように生きてきたのかを垣間見ることができます。一般に、人々の生活の様子や生活の中で使っていた物、そして昔の習慣やコミュニティーの記憶というものは、きちんと保存しようという意識を持たなければいとも簡単に失われていくものですが、このような小さな村にも記憶が保存されているというのが、たとえ観光地ではないとしても、ギリシアの村々の素晴らしいところであり大きな魅力だと思います。





上にお見せした写真は、モノピガド村の入り口にある「ペレック」というレストランです。立地もとてもよく、週末には何百人もの人がここを訪れ、結婚式やお祝い事の多くのイベントがここで行われます。ここでは、ポントス地方の伝統料理なども食べることができます。コロナ禍が終わって旅行が自由になり、テッサロニキやハルキディキにまでいらした際には是非脚を伸ばしてみてください。
最後に少し告知なのですが、コロナ禍の経過次第にはなってくるのですが、2022年の三月中旬に今回紹介したポントスのギリシア人に関するセミナーを京都で開催の予定です。このセミナーにはギリシアより大学の教授や「ケメンチェ」とも呼ばれる「ポンディアキ・リラ」の楽器の奏者を招き、高校の世界史にも登場するトレビゾンド帝国を含むポントス人の歴史、古代ギリシア語の要素を色濃く保存しているポントス方言、そしてポントスの舞踏や音楽、そして料理や衣服を含む習俗について紹介する予定です。また詳細が明らかになり次第お知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。
GreeceJapan.com「ギリシャを代表する作家カザンザキスの『饗宴』、福田耕佑の日本語訳で出版」


今回は以上になります。私にギリシアで残された時間も僅かになってきましたが、最後までギリシアの面白い一面をお伝えできればと存じます。それでは今日はこの辺で、Γεια σας(さようなら!)。
[ アギオス・アンドニオス(Άγιος Αντώνιος)とモノピガド(Μονοπήγαδο)の地図 ]