ギリシャで目指すさらなる高み~サッカーAPSザキントス所属・小長谷勇太 独占インタビュー

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4月11日(日)のエスニコス・スクリカドス戦-中央が小長谷選手/photo: ioniansports.gr

これまでギリシャのサッカー界で戦うためギリシャ入りした8人の日本人選手の中で、彼、小長谷勇太(こながや ゆうた)は7番目にギリシャ入りした選手だ。昨年2020年11月、ギリシャリーグ、ガンマ・エスニキのAPSザキントス(APS Zakynthos)に初の日本人選手として入団した直後、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に延期となったリーグ戦が今年4月から再開。4月11日(日)に行われた地元クラブ・AOエスニコス・スクリカドス戦でついにギリシャ戦デビューした小長谷選手は、フル出場の末64分にゴールを決め、チームの勝利に貢献した。

様々な困難を乗り越えつつ、力強く自らの道をゆく小長谷選手にGreeceJapan.comは独占インタビュー。サッカー選手としてのキャリアのスタートからギリシャとAPSザキントスについて、そして将来の夢までお話を伺った。


インタビュー:永田純子(Junko Nagata – GreeceJapan.com)

ギリシャ・ザキントスのクラブ・APSザキントスに加入する以前には、ギリシャ系オーストラリア人が創設し、「ニュー・ヘラス(New Hellas)」のニックネームを持つオーストラリア・メルボルンのクラブ、ポート・メルボルンSC(Port Melbourne SC)に在籍されておられたあなたですが、オーストラリアでの選手生活の後、どのような経緯でギリシャ本国でサッカー選手としてのキャリアを継続することを決断されたのでしょうか。

一番最初のきっかけは2018年の夏にオーストラリアで一緒にプレイしていた僕の大学の先輩がフィンランドの1部のチームに行った事です。当時ヨーロッパに行って、サッカーするという事は考えもしなかったのですが、その先輩にすぐに電話をして、その様子や現地の雰囲気やサッカーの様子など詳しく聞いたことを覚えています。先輩が行ったことで僕にもチャンスがあるんじゃないかと思い立ったのが、1番最初のきっかけです。しかし、それから、オーストラリアでやりたいこともあり、実際ヨーロッパへの具体的な行動は、出来ていませんでした。2020年に、もう一度ヨーロッパでプレーしたいと強く思うようになり、色々と、コンタクトや、ヨーロッパのスカウトが集う練習会にも参加したのですが、うまく行きませんでした。そんな中、コロナが世界中を襲い、オーストラリアのシーズンが中止になってしまいました。そこで、僕は昔から少しずつ抱いていた、オーストラリアを出て、ヨーロッパでサッカーするという目標を叶えるために、バック一つ持ってヨーロッパに挑戦しました。

約2ヶ月、ラトビア、デンマークに挑戦したのですが、上手くいかず、本当に路頭に迷っている所を、今のギリシャのAPSザキントスが拾ってくれた形です。このチームの監督であるニコス・マリノスが、実はポートメルボルンのコーチをやっていて、彼もコロナの影響でギリシャに帰ることになり、彼が、監督に就任した瞬間に僕に連絡してくれて、運良く今回の移籍が決まりました。

ポート・メルボルン時代の小長谷選手

あなたはギリシャのサッカークラブで戦うことを選択した7人目の日本人サッカーですが、過去ギリシャで戦った日本人選手についてご存知でしょうか。直接お話されたことはおありでしょうか。

それが全く知りません。笑
他の日本人選手の方は日本でも活躍されていた有名な選手ばかりだと思うので、ぜひお会いしてお話を聞かせていただきたかったです。笑

APS ザキントスの一員となられて以降、試合には出場されておられるでしょうか。あなたが所属するクラブについて、その印象についてお教えください。

僕がチームに合流したのは去年の11月で僕が入国したのとほぼ同時ぐらいにロックダウンが始まりリーグ戦の中断が決定しました。なので試合は4月11日の日曜日が最初の試合になります。

クラブについては現在ギリシャ4部に所属しているチームですが、チームの規模、ファンの多さ、また昔2部に所属していたからでしょうか、クラブの規模が大きいです。チームメートもとてもよくしてくれて、何よりチームの会長ステリオス・グナリスがギリシャの父親代わりのように助けてくれます。彼のためにチームを優勝に導きたいと思えるほど素敵な会長で、それは僕だけではなく他の選手もみんなそう思っていると思います。それぐらい会長の人望、人柄に惹かれるところはあり、クラブの人だけではなく島全体の人がチームに所属していることによって温かく迎えてくれていて、とても素敵なチームです。

様々な困難を乗り越えた2021年4月11日(日)のAOエスニコス・スクリカドス戦でギリシャでのデビュー戦を飾られました。フル出場され、64分には得点を得、3-1とチームの勝利に貢献されましたが、その印象についてお教えください。

初戦が、地元チームとのダービーマッチだったので、両者の熱い気持ちのこもったプレーが多く、たくさんの選手がエキサイトする場面がすごく多かったです。僕自身も1年ぶりの公式戦で、はじめてのギリシャでの試合ということで、どんな感じになるのか、全く想像がつかない中での試合でした。
僕らのチームは、最初の10分で1人退場になってしまい、ほとんどの時間を10人で戦うことになったのですが、なんとか勝つことができて良かったです。
僕自身としては、初戦で1ゴールと1アシスト出来たので、結果を見れば良かったですが、納得のいかない部分も多々ありました。ただ、初戦で1年ぶりだったので、これからもっと良くしていきたいと思っています。

国内のリーグ戦が中止されるなど、ギリシャでは新型コロナウイルスによる影響が深刻ですが、ギリシャ国内では現在どのような状況なのでしょうか。

ギリシャではロックダウンが11月から始まり、今も継続されています。お店はテイクアウトのみ、夜9時以降は外出禁止等のルールがあります。ただヨーロッパ全体を見渡したときに、ギリシャはそこまでコロナの影響受けている国ではないのかなと言うふうには思いますが、感染者数はなかなか収束がついていないので心配なところではあります。それによってサッカーのリーグ戦の再開も最終決定が2ヶ月以上伸びたり、再開を宣言したのにもかかわらず、中止を宣言され、また再開を宣言されるという、話が本当に二転三転して、個人的には大変な時期を11月から2月の末まで過ごしました。今は毎週コロナのテストを受けながらの練習、試合の継続になっています。

この大変な時期に、またサッカー選手としてプレイできる喜び。また今まで何気なくサッカーをしていた自分の人生は、当たり前ではないんだなということを、とても教えられた期間だったと思っています。

ザキントスはギリシャでも有数の美しい島であり、観光スポットとしても世界的に知られています。特に外国人にはナヴァイオのビーチが有名です。ザキントスで過ごされているあなたから、島と島の人々について、その印象をお教えください。

島については、自然が本当に豊かで海が絵に描いたような青、水色です。景色は今まで見たことないくらいきれいな自然を毎日のように見ることができ、毎日ビーチで散歩しています。ただ今は時期的にはシーズンオフ、そしてコロナの影響もあり観光客はほぼいない状況です。島の人々については先ほどの項目でも言いましたが、チームの事を島の人たちがみんな知っているので、島のみんなが本当に声をよくかけてくれます。とても温かくファミリーのような感じにさせてくれる、素敵な島の人々です。

ギリシャで過ごされた日々の中で、ギリシャとギリシャ人から受けた最も印象深い出来事は何でしょうか。

“Calm”ですね。これに尽きるんじゃないかと思います。時間通りに事が進む、計画通りにことが進む事はほぼないんじゃないかと。笑 サッカーの大事な決定も二転三転するような事態ですから、いろんな状況を想定して、日々を過ごしています。そして、何が起こっても”Calm”。笑 Freddo Espresso を飲んで落ち着いて状況に対応する。それがギリシャで生活する上で1番大切なことなんじゃないかなと思います。

あなたはサッカー選手として、早稲田大学でプレーした経験をお持ちですが、そもそもどのようなきっかけからサッカー選手になることを選択されたのでしょうか。

小さい頃からサッカー選手になりたかったのですが、早稲田大学時代では、そもそもサッカー部内でも全く試合に出ていませんでした。だから、まず日本でプロになれるような実力ではなかったです。オーストラリアに行った理由としては、サッカーを続けたいのはもちろんありましたが、海外で生活して視野を広げる。英語を学ぶ。といったサッカー選手としての自分だけではなく、それ以外の自分を成長させたい。いろんなことを経験、吸収して、勉強したいという思いがあり、オーストラリアへ行く事を決めました。

僕自身はサッカー1本で、活躍している人たちとは全然違うと思っていて、(まず、彼らみたいにサッカー1本で行けないというのが正直なところです。)サッカーという軸と、それ以外の軸を高めるために、(わかりやすいところで言うと、英語とか)海外でサッカーしています。
サッカー選手としての僕は近い未来に終わりが必ず来るため、それ以外で、他の人が味わえないであろう経験や、多くの人に会って話して、自分の肥料にしていきたいと思っています。
オーストラリアの時もそうでしたが、その国を出る時に全部やり残した、やり切った、と言えるように、ギリシャでも、サッカーはもちろん、多くの人、文化、言葉、景色、歴史にたくさん触れて、自分の人生の財産、経験値をできるだけたくさん、必死になって貯めたいと思っています。

将来的に、どのような夢を持っておられますか。

サッカー選手としては、出来るだけ上のカテゴリーに行ってみたいです。そこで、うまい選手とたくさんサッカーして、揉まれて、自分がどこまで上手くなれるのかというのを見てみたいです。ただ、年齢的に日本代表!とか言える年ではないので、出来るだけ、上に行く、自分を高めて、どこまでいけるのかというのを試していきたいです!

あとは、今までお世話になった人に会いにいって、恩返ししたいです。そして、お礼を形や、行動で返せるような人間になりたいです。それは、サッカーで結果を残すとかではなく、直接会って、恩をしっかり返していきたいです。

今のところ、僕はお礼を具体的な形で返せるほど強くないので、もっと頑張って、目に見える形で返していきたいと思っています。

ありがとうございました。

永田 純子
永田 純子
(Junko Nagata) GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

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