しがしが留学記:雑感・テルマイコス湾にてコロナ禍を嘆く…

photo: 筆者提供

ギリシャ第二の大都市・テッサロニキのアリストテリオ大学哲学部で訪問研究員生活を送る福田耕佑が、ギリシャ滞在生活を通じた留学記をつづる「しがしが留学紀」。ギリシャ語を日本語でどう表記するのかという問題について考察し、各方面から反響を得た第7回に続き、第8回となる今回は、現地で生活する筆者ならではのテーマとして、キリスト教の重要な祭日である復活祭(パスハ)にまつわるギリシャ独特の習慣・文化について紹介します。

・福田耕佑のテッサロニキ「しがしが」留学記:過去記事はこちらから!


Γεια σας(ヤ・サス)! 皆さん、こんにちは。Γεια σαςで始まり Γεια σαςに終わるしがしが留学旅行記を執筆させていただいております、福田耕佑です。テッサロニキでの留学生活もいよいよ終わりが近づいていますが、残念ながら相変わらず生活はコロナ、コロナ、コロナです。昨年の11月よりずっとロックダウンが続いており、移動や行動に制限がかけられたりクリスマスやカーニバルなどのイベントもなくなってしまったりと何だか寂しいです。プロサッカー選手の香川真司選手がテッサロニキのサッカーチームΠΑΟΚに移籍したこともあり、スタジアムまで脚を運び試合を観戦したりショップに行ってどんなグッズがあるか見てみたりしたいなぁと思っていますが、まだしばらくはお預けです。

それでもギリシアでも、日本でバレンタインデーにこの時期のチョコレートが売られたり、ひな祭りにひな人形を飾ったりするように、季節や時候につけ様々な食べ物や習慣があります。今回はごく一部ですが、「キラ・サラコスティ(Κυρά Σαρακοστή)」という「立体式イースター専用週単位カレンダー」なるものと習慣を紹介したいと思います。

キラ・サラコスティ/筆者提供

「か、かわいい?か、かわいいかな?」というのが私の初見の感想です。まずは名前の説明ですが、キラというのはフランス語のマダム、英語のミスにあたり、サラコスティはキリスト教の四旬節を表しています。四旬節というのをごく簡単に説明すると、キリスト教の重要な祭日である復活祭(パスハ)(*1) に至るまでの四十日間の期間を指します。そうです、このキラ・サラコスティは復活祭に至るサラコスティの期間に大きな関係を持っております。

筆者手作りのキラ・サラコスティ/photo: 筆者提供

こちらは自分たちで家で焼いたものです。「かわいい、かな?」この習慣の起源は昔のペロポニソス半島のアルカディア地方にあるそうです。そこでは、おばあちゃんたちがサラコスティの期間の少し前にこのキラ・サラコスティを作っていました。目は笑わず、口元は閉じるか描かれず、手は祈りのために体の前に組まれています。スカートなのは共通ですが、衣装の模様は自由です。何といっても特徴的なのが、頭につけられたちょんまげのような十字架と七本もある脚です!この七本の脚は四旬節の七週間を表しており、カタラ・デフテラ(Καθαρά Δευτέρα / 聖灰月曜日)(*2) に飾り始めて、その週の土曜日に左の脚から折り、それから土曜日ごとに復活祭まで孫が折っていくそうです。こうすることで今の週がサラコスティの何週目にあたるのか、後何週間で復活祭なのかが一目瞭然にわかります。

地域や時代によってバリエーションもあるとは思いますが、復活祭を祝うパンを作る時におばあちゃんがこの最後の脚を包んでパンの中に入れ、お父さんが復活祭の食卓に出されたこのパンを切るのですが、この切られたパンの中に最後の一本の脚があった人がラッキーな人だというような習慣があるそうです。

一枚目の写真で見たようにこのキラ・サラコスティは紙に書くものもありますが、二枚目の写真やサムネイルで見ていただいたように酵母を入れず塩をたくさん入れたパンにしてオーブンで焼いたものもあります。

日本でも「イースター・エッグ」や「イースター・バニー」のような復活祭の習慣がアメリカなどの文化を通して少しずつ認知されてきているような気もしますが、ギリシアにも古くからある伝統的な復活祭にまつわる習慣が沢山あり(あるらしく)、本当に興味がつきないですね。

今回の記事は以上です。日本でも新学期と桜の季節が近づいてまいりますが、2021年度は去年度よりももっと素敵な一年になればいいなと願うばかりです。それではまた次回の記事でお会いしましょう!Γεια σας(ヤ・サス/さようなら)!!

*1…2021年の「パスハの月曜日(Κυριακή του Πάσχα)」は5月3日(月)
*2…2021年の「カタラ・デフテラ(Καθαρά Δευτέρα / 聖灰月曜日)」は3月15日(月)

GreeceJapan.com 2021年:ギリシャ・日本の休日と祝日

 

福田 耕佑
福田 耕佑
京都大学文学部非常勤講師。専攻はニコス・カザンザキスを中心とした近現代ギリシア文学・思想史。主な著作に翻訳「ニコス・カザンザキス著 『禁欲』京緑社 2018年」、ギリシア語での著作に«ο Καζαντζάκης και η Ελληνικότητα» στο «Νίκος Καζαντζάκης, Η απω-ανατολική ματιά» (Επιμέλεια Έλενα Αβραμίδου, Ένεκεν, 2019 )。

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