しがしが留学記-突然の第二次アパゴレフティコ(ロックダウン)編-

テサロニキの海辺の様子/photo: 筆者

ギリシャ第二の大都市・テッサロニキのアリストテリオ大学哲学部で訪問研究員生活を送る福田耕佑が、ギリシャ滞在生活を通じた留学記をつづる「しがしが留学紀」。第5回となる今回は、新型コロナウイルスの感染拡大により11月7日(土)から今年再び全土でのロックダウン(アパゴレフティコ)となったギリシャでも、特に深刻な状況にあるテサロニキで研究生活を送る氏が現地の状況をレポートする緊急投稿です。

・福田耕佑のテッサロニキ「しがしが」留学記:過去記事はこちらから!


みなさん、こんにちは!夫婦でテッサロニキ留学中の福田耕佑です。2020年11月現在、日本もギリシアもコロナ禍のため大変なことになっています…この留学記を書いている間にもギリシアでは特にテッサロニキを中心にした北部でコロナ・ウイルスの感染者が増加の一途をたどっております。もちろんなぜ北部ギリシアに感染者が多いのかということは私にはわかりませんが、テッサロニキのバス停などで7月より観光客を受け入れたことを非難する張り紙などを目にしましたが、直接の因果関係やなぜ北部に多いのかに関する理由は不明ですし、これについての議論も管見の限りに見たことがございません。ですが、とにかくテッサロニキを中心とした北部ギリシアの感染者が多いという話がラジオ等で繰り返されおります。

現在のコロナ禍によるギリシアでの生活上の大幅な制限と私たちの置かれている状況に関しまして、短く一言で言ってしまうと「テンション下がる」につきます。2020年の春にも一回目のロックダウンを経験しておりますので、どのように対応すべきかといった勝手はいろいろ分かっており、日常の大きな問題というものも今のところございません。「テンション下がる」と言ってしまいますと軽く聞こえてしまうかもしれませんが、精神的にも肉体的にも僅かずつですが徐々に疲弊していっているなと感じ、今のところはこの表現が一番しっくりきています。以下では私の限られた記憶と記録に従って、時系列に沿ってここまであった出来事や感じたことをお話したいと思います。

観光客もあらかた帰ったかなぁ、などと呑気にまだ少し暖かさの残る日々を楽しんでいた10月29日(木)の朝、朝ご飯にブガッツァ(*薄いパイ生地でフィリングが包まれたパイ)を買いにこれまた呑気に近所のブガッツァディコ(ブガッツァ屋さん)に出かけると、何とそこのお店のテレビで翌日からテッサロニキもコロナ・ウイルスのレッド・ゾーンに入るという衝撃のニュースを聞かされました。それまで、コザーニやカストリア、とセレスやヨアニナといった北ギリシアに位置する街々に多くの感染者がでており、レッド・ゾーンに入れられている街もあるとう話は聞いていましたが、「やっぱりテッサロニキもかぁあぁぁ」という感じでした。

ところで翌日10月30日(金)にはサモス島やイズミルで大地震等もありましたが、テッサロニキは全く揺れを感じませんでした。私が鈍感なだけかもしれませんが…。

ラジオやネット媒体などのニュースで様々な情報が飛び交っていたのですが、11月3日(火)よりテッサロニキで本格的にロックダウン(アパゴレフティコ)が始まりました。本稿のタイトルでも書いたのですが、ここでロックダウンをアパゴレフティコ(απαγορευτικό)と書いたのは、ギリシアの金田一教授的なポジションにいらっしゃり現代ギリシア語の辞書の著者として高名なゲオルギオス・バビニオティス氏(Γεώργιος Μπαμπινιώτης)が11月3日(火)付のFacebookの投稿で、ロックダウン等のコロナ禍の中でよく用いられる英語由来の単語をギリシア語に直そうと提起したことに由来しています。もちろんほとんど皆が今でも英語の単語を用いていますし、私もロックダウンと言っています(笑)。

ロックダウンが敢行され、第一回目のロックダウンの時のようにSMS等で外出許可を申請する方式に再度移行したとはいえ、初めのうちは多くの人がマスク着用の上で外出していたようにも思われます。11月8日(日)に海沿いを散歩しましたが、当時もカフェやレストランはデリバリー及びテイク・アウェイが中心で一緒に集まれるところがなかったためか、多くの人がコーヒー片手に散歩していました。(この時も公園等での球技やスポーツは禁止されていましたが、普通にいつも通り遊んでいる人も大勢いました。)私たち夫婦の生活は基本的に大学の授業の予定を中心に回っており、授業は全てオンラインで、私が通っているとある塾の授業までもオンラインになりました。ですので私たちの日常生活にはさほど大きな変化はありませんでした。ただ外出する時間が減ったため運動不足に陥り、夜なかなか眠れなかったり日中のやる気がおこらなかったりというかなり深刻な事態に陥ってしまいました。それをきっかけに自宅でエクササイズやヨガが始まりました。

そして11月7日(土)のギリシア全体でのロックダウンを控えた11月6日(金)の日暮れ時には、テッサロニキのレフコス・ピルゴス周辺で大勢の人が集まって反ロックダウン・デモも行われました。この模様を私はラジオやFacebookの同時中継で耳にしていました。本当に皆がここまでよく耐えてきましたが、ロックダウンは市民生活に大きな負担を強いているんだなぁと強く感じました。

試してみたデリバリー/photo: 筆者

それから現在一週間弱が経ちました。今では多くのレストランやカフェが料理や飲料の配達を行うようになり、電話やデリバリー用のアプリで簡単にお店の料理を自宅に届けてくれるのですが、これが今の私たちの主要な楽しみでありまた贅沢です。また自宅から大通りを含むいくつかの通りを見ることができるのですが、この一週間の間でかなり歩行者の数が減ったように思われます。そして日々コロナ・ウイルス感染者の増加は留まるところを知らず、また私の大学の友人にも感染したと思しき人も現れてきて、身近にコロナ・ウイルスの脅威を感じるようになってしまいました。この間に小学校などの授業もオンラインに移行したようで、お子様のいるご家庭にはネット環境の整備も含めた様々な負担が増大しただろうなぁと容易に想像がつきますし、皆がオンラインの授業でネット回線を使用しているのでネット環境が正常に働かないなどという話も耳にしました。毎日政府からロックダウンに関する制限が次々と発表されておりこの先日常生活がどうなっていくのかわからないですが、とにもかくにも私としては研究に邁進するしかございません。また大きな変化や皆様にお話しすべきことがありましたら、この留学記の記事にて共有させていただければと存じます。そして、皆様におかれましてもどうぞ健康にご留意し、少しでも楽しい日々をお過ごしください。Γεια σας!

マスクをした人々が歩くテサロニキの海辺/photo: 筆者

 

福田 耕佑
福田 耕佑
京都大学文学部非常勤講師。専攻はニコス・カザンザキスを中心とした近現代ギリシア文学・思想史。主な著作に翻訳「ニコス・カザンザキス著 『禁欲』京緑社 2018年」、ギリシア語での著作に«ο Καζαντζάκης και η Ελληνικότητα» στο «Νίκος Καζαντζάκης, Η απω-ανατολική ματιά» (Επιμέλεια Έλενα Αβραμίδου, Ένεκεν, 2019 )。

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