GreeceJapan.com独占インタビュー:A. ポツィス博士~ギリシャの航空宇宙産業の可能性と日本との協力関係

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ギリシャの展示ブースにたたずむポツィス博士(photo: Junko Nagata/GreeceJapan.com)

世界各国から500以上に及ぶ航空・宇宙・防衛産業の企業・団体が集結し2018年11月28日(水)から30日(金)まで東京ビッグサイトで行われた「国際航空宇宙展2018東京(Japan International Aerospace Exhibition 2018 Tokyo)」にギリシャは初めて出展を果たした。

今回GreeceJapan.comはこの展示会のために来日したギリシャ宇宙産業連盟(Hellenic Αssociation of Space Industry)理事長にしてギリシャ宇宙機関(Hellenic Space Agency)のボードメンバーのひとりアサナシオス・ポツィス博士に独占インタビュー。ギリシャにおける航空宇宙産業の現状をはじめ、この分野におけるギリシャと日本との協力、そして将来の展望についてお話を伺った。

インタビュー:永田純子(Junko Nagata)/GreeceJapan.com

ギリシャの宇宙産業分野での活動についてお教えください。

現在我々ギリシャ宇宙機関(Hellenic Space Agency)は宇宙産業分野で5つの開発・投資活動を実施しています。

まず1つ目が、欧州宇宙機関(ESA)との協力関係の強化です。これまで協力してきた様々なプログラムの改善をはじめ、新たなプログラムの実施、そしてギリシャの産業界が欧州宇宙機関(ESA)の宇宙産業の次なるミッションに参入することを通じて、関係の強化を図っていきます。

次に2つ目の我々の戦略として、欧州宇宙機関(ESA)と協力して、2019年内を目標に今後5年間宇宙関連事業のスタートアップを支援するビジネスインキュベーションセンターの創設を計画しています。このようなセンターの創設を目指すのは、宇宙産業に特化した新規企業には、例えばモバイル機器のアプリケーション製作を行う企業などとは異なった対策が求められることによるものです。

そして3つ目が、11個の小型衛星を開発する国家プログラムの実施です。このプログラムに関しては日本のJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)とも意見交換を行いましたが、これら11個の小型衛星開発計画の推進のために、現在日本をはじめインド、イスラエル、アメリカ、そしてフランスといった様々な国の中から我々にとって最適な提携機関を模索しているところです。

続いて4つ目、これは日本にとって重要であると私が確信しているものでもありますが、宇宙産業のテクノロジーとノウハウを海運業界の製品に移転することを目指しています。これから建造される新造船には、より多くの電子機器や自動化、ロボット、通信機器、新素材が用いられており、またこういった船ではグリーンエネルギーが用いられ、環境への負荷の軽減が図られることになりますが、海運が非常に重要な位置を占めるギリシャにとってこれは極めて重要なテーマです。ギリシャ人船主は中国、韓国、日本の3ヵ国で船舶を建造していますが、この分野での投資促進を求める我々にとって、日本はギリシャ人船主が日本で建造する新造船で利用されるこれら新しい製品とサービスのために協力しあう戦略的パートナーであると言えるでしょう。

そして5つ目が、火災をはじめとした壊滅的災害の対策のための大型の地球観測衛星を開発するプロジェクトです。

これら5つのプロジェクトは、ギリシャの産業、経済、そしてこれらの開発に従事するためにギリシャに居住する必要のある若者たちを支援するために必要な基本的なプログラムであると言えるでしょう。

世界の航空宇宙分野の中において活用されている重要なギリシャのテクノロジーやソフトウェアは何でしょうか。

現在我々はLAGARD(Large Stable Deployable Structures)と呼ばれるEU(欧州連合)のプログラムの一つを主導しています。これは、宇宙空間に打ち上げた装置がゆっくりと展開してゆくデプロイ・インフラストラクチャと呼ばれるもので、皆さんもご覧になられたことがあるのではないでしょうか。これは、ある小さな箱の中に収納されており、時間をかけてゆっくりと展開し最終的に30mにも及ぶアンテナになるものです。この機構のすべてを我々が製作しました。

この他の主要な活動として、プラズマエンジンを制御する電子機器の製作が挙げられます。次世代のテクノロジーであるホールスラスタと呼ばれる推進エンジン、これに係る一連の電子機器をギリシャ国内で製造し、そのテスト、システム設計、製作までを実施しました。

そして最後に特筆すべきは、我々がアプリケーション開発に携わるプロジェクトチームを持っていることでしょう。このチームでは宇宙空間からの映像、気象データ、海運関連の情報を取得し、様々なレベルの用途を持つアプリケーションを製作しています。セキュリティや国境管理における保安から、精密農業、ナビゲーション、環境分析、自然災害、水害、地震、そして観光業までアプリケーションの用途は多岐に渡っています。

こういった実績から、我々には幅広い可能性があることをご理解いただけるのではないでしょうか。我々は常に最新のテクノロジーにフォーカスしながら、最善を尽くすことに注力しています。

そして最後に、航空宇宙分野において我々が実現可能な事項を3つ申し上げましょう。それは、センサーテクノロジー、複合素材、そして電気パルスによる技術です。現在あらゆる分野で利用され、また世界的レベルで多額の投資が行われているこれらのテクノロジーに焦点を当てていきたいと考えています。

ギリシャ企業はハードウエア・ソフトウェアを日本の宇宙産業関連分野に輸出しているのでしょうか。

もちろんです。衛星を地上で制御するためのある2つのシステムをギリシャ企業が日本企業に向け販売しています。このほかにも、日本には光ファイバ増幅を行う電子機器を販売した実績があり、自衛隊には特殊な用途の双眼鏡を販売しています。

また現在、日本の防衛省が必要としているあるソフトウェア、これは我々がギリシャで開発したものなのですが、これを富士通と協力して導入しようと試みているほか、レーザー技術の分野においても様々な試みを続けています。

今申し上げたものが日本における我々の実績です。数こそ少ないものの、我々にはこう言った実績を強化し、増大させる数多くの可能性が秘められていると言えるでしょう。

ギリシャ宇宙機関の最優先課題とは何でしょうか。

現時点での我々の最優先事項は次のとおりです。

まず、ギリシャでは様々な企業が宇宙関連産業を推進して来たことは申し上げたとおりです。またこれと同時に、大学など学術機関も長年この分野で研究を継続しています。ギリシャが更なる開発、発展、近代化のために、宇宙関連分野がもたらす新しい技術と革新を必要としている今、我々ギリシャ宇宙機関の最優先事項のひとつは、ギリシャが必要とする成果を得るために、こういったすべての関連部門を互いに結びつける戦略を立てることなのです。

そのためには産業部門、学術機関、そして政府が一体となって、こうしたプログラムを推進しつつ、その中からギリシャ人の日常生活に求められるものや国の経済に良い影響をもたらすものに焦点を当てて必要なものを選択していくという戦略を立てることが必要となるのです。

ありがとうございました。

(Interview:2018年/東京ビッグサイト)

永田 純子
永田 純子
(Junko Nagata) GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

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