2017年8月4日(金)から6日(日)の3日間に渡って開催された2017ジャパンパラゴールボール競技大会で、ギリシャ女子代表はタイトな日程の中見事銅メダルを獲得した。
それぞれ異なる視覚障がいを持つ18歳から51歳までの幅広い年齢のギリシャ・ゴールボール界のトップアスリートらを率いて大会前日に来日、そして決勝翌日には慌ただしく離日した代表監督のメルポメニ(メニ)・ケサノプール氏にGreeceJapan.comは独占インタビューを敢行。3年後に迫った2020年東京パラリンピックへの展望からギリシャのゴールボール界の抱える課題まで、氏のお話を伺った。
インタビュー:永田純子(Junko Nagata)
2017ジャパンパラゴールボール競技大会での銅メダルおめでとうございます。今大会でのギリシャ代表チームの活躍について教えてください。
1か月後の9月にフィンランドでのカテゴリーA・欧州選手権を控えた我々にとって、今年2017年二度目の、かつ直近の世界大会となる日本でのこの大会は大変意義のある一戦であったと思います。
特に今回はチームの戦術やフォーメーション、長距離の移動を経た後での戦い方、またチームのパフォーマンスに与える影響などについて様々な角度から検討する絶好の機会になりました。これによって、2020年の東京パラリンピックへの展望が見えてきたように思います。
大会への参加を通して、このような機会を与えていただいたことに心から感謝します。
日本のゴールボールについて、また今回の大会についてどのような印象をお持ちですか?
我々が日本代表チームと戦った直近の大会は2016年5月と2017年5月に開催されたマルモ・レディ・インターカップ(スウェーデン・マルモ)でしたが、戦う度その強さに磨きがかかっているように感じます。
今大会で見せたあの素早い動きは、まさに金メダルにふさわしいと言えるでしょう。あの時試合で見せた集中力と素早い動きで、2020年の東京パラリンピックの主役となることは間違いありません。
そして大会運営については、何よりも素晴らしいの一言に尽きます。大会に関わられたすべての方々に感謝申し上げます。
特に試合の合間に子供たちをはじめとした来場者がゴールボールを体験できるプログラムが行われたことは私たちにとっても思いがけない喜びでした。これは、障がいを持つ人たちを肯定的にとらえることを学ぶ感動的な試みであったと思います。
それに加えて授賞式で奏でられたあの美しいオーケストラの音楽、ボランティアの皆さんの献身的な働き、心温まるおもてなし-我々が受けたすべてに心からお礼を申し上げます。
あなたが監督を務められた2004年のアテネパラリンピックで、ギリシャ女子代表は8位の成績をおさめました。次の2020年東京パラリンピックであなた方が日本で戦う機会が得られることを我々も祈っていますが、五輪への切符を得るために何が必要であるとお考えですか。
パラリンピックの出場に至るまでの戦いが簡単なものでないことは我々のチームの皆が理解しています。
まず、各大陸で開催される世界大会、つまり我々にとってはカテゴリーAの欧州選手権がこれに当たりますが、ここで優勝した国が2020年東京大会への切符をいち早く手にすることになります。
次のチャンスとして、各大陸から選出された国々で開催される2018年の世界大会で、金銀銅のメダルに輝いた3つの国が新たに五輪の参加資格を獲得、そして最後のチャンスとして、2019年に開催されるIBSAワールドゲームズで勝ち抜き金銀メダルを獲得した2チームが、五輪の残りの切符を手にすることになるのです。
我々の代表がこの戦いを勝ち抜き五輪への切符を手にし、更なる勝利を目指し2020年の東京でベストを尽くす機会が得られることを願っています。
ギリシャのゴールボールを取り巻く状況についてお教えください。
ギリシャの経済危機はスポーツ界に、特に障がい者スポーツの世界に危機的な状況をもたらしました。
各国代表選手の、特にカテゴリーAのトップ争いはハイレベルです。しかし我々には十分な予算も、満足な事前準備もなく、代表選手を集めた全体練習も難しいなどの問題を抱え、国際的な親善試合の出場も容易でない状況です。
しかしギリシャのゴールボール界における最も深刻な問題は、男女ともに選手として活躍できる視覚に障がいを持つ若い世代を発掘するのが難しいということにあります。これにより、長期的な視点を持った男女代表選手の育成が困難なものになっています。
この競技で活躍が期待される若い世代をいかに発掘し、競技について広く周知していくかがギリシャ代表チームの大きな課題であると言えるでしょう。
ゴールボールは、視覚障がいを抱えながらこの競技に打ち込むアスリートに生きる意味と喜びを与える価値あるスポーツです。だからこそ、我々が抱えるこれらの課題が解決されることを願ってやみません。
こうした我々の試みを理解し、支援してくださる全ての方々に心から感謝申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
photos: Junko Nagata © GreeceJapan.com